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2013年 04月 17日 ( 1 )

村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(文藝春秋)

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村上春樹(むらかみ・はるき1949-)
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年
英題Colorless Tsukuru Tazaki and His Years of Pilgrimage
2013年4月15日 第1刷
文藝春秋
1700円+税
ある日ふと思い立って、机に向かってこの小説の最初の数行を書き、どんな展開があるのか、どんな人物が出てくるのか、どれほどの長さになるのか、何もわからないまま、半年ばかりこの物語を書き続けました。最初のうち僕に理解できていたのは、多崎つくるという一人の青年の目に映る限定された世界の光景だけでした。でもその光景が日々少しずつ変貌し、深く広くなっていくのを見るのは、僕にとってとても興味深いことだったし、ある意味では心を動かされることでありました。(著者インタビューより)

1Q84』の時は、売らんかなの商業主義が嫌だったし、どうせ3年くらいで文庫化されるだろうからその時読めばいいと思い、買わなかった。新潮文庫本4冊になってから読みました、割と一気に・夢中になって。今回も、相変わらずの謎めいた宣伝ぶりだけど「まあそれは村上春樹だからしょうがないか」と思え(自分、ちょっと大人になったのかも^^)、前作同様やはり文庫化(今度は文春文庫でしょうね)も3年くらいのうちになされるのだろうけど、『1Q84』刊行時とは自分の置かれた状況が変わっている(前作と本作の間には、僕の末期癌発見が挟まる。余命!)ため「今しか読めないかも」との思いがあった。
前置きが長くなったが(汗)、けっきょく買っちゃいました、4月13日、50万部とかの発売当日。

長編小説とは云っても単行本で370ページですからそんなに長くない。喪失と再生-ハルキワールドではおなじみのテーマでしょうね。『ノルウェイの森』(1987)『海辺のカフカ』(2002)『1Q84』(2009・2010)につながる系列の作品。大きな物語がない分、『ノルウェイの森』と似てるかも。
多崎作(たざき・つくる)は名古屋市の郊外にある公立高校生時代、同じクラスの赤松・青海・白根・黒埜と友達だった。高校卒業後、多崎以外の4人は名古屋で進学し、多崎は上京して工科大学に入学する。大学2年の夏、
・・・我々はみんなもうお前とは顔を合わせたくないし、口をききたくもないと告げられた。きっぱりと、妥協の余地もなく唐突に。そしてそのような厳しい通告を受けなくてはならない理由は、何ひとつ説明してもらえなかった。彼もあえて尋ねなかった。(pp5-6)
これが「喪失」。多崎の「再生」は2度あるでしょうね。大学時代に1度、鉄道会社に勤めてから出会った沙羅の勧めで行く過去を明らかにする旅(巡礼)で1度。
村上春樹の長年のファンであれば、本作、読んで損はないでしょうけど、こう書くと当ブログ炎上必至^^かもしれませんが、正直あまりおもしろくない作品だった。松井秀喜の国民栄誉賞と同じ程度の疑問を感じるできの作品だった。
①ハメーンリンナ(フィンランド)は良いが、主要舞台の一つ「名古屋」がムラカミワールドには似合わない。もちろん小説で名古屋は必然性のある場所になってるのだけど。
②灰田・沙羅の謎っぽさが、他の作品の登場人物と比べると、弱い。
③筋立て。高校時代の「喪失」が無理っぽい。喪失の原因が誤解から生じている部分が、作品では無理矢理?意味ありげなことに置き換えられている。
④メタファーがこれまでの作品と比べると少なく陳腐。でもメタファーをどう英語・中国語・朝鮮語・フランス語・・・に翻訳するかは、翻訳者の腕の見せ所なんでしょうね。
初めて村上作品に触れる若い人がこの作品から入ると失望するかも。村上文学読者デビューには不似合いな作品です。
今回の作品の音楽は、タイトルにも引用されているフランツ・リスト『ル・マル・デュ・ペLe Mal du Pays』が最重要曲。ラザール・ベルマン版、アルフレート・ブレンデル版。この曲がこの小説の通奏低音になってるんでしょうね。ほかには『ラウンド・ミッドナイト』『ラスヴェガス万歳!』。

by tiaokumura | 2013-04-17 08:05 | | Comments(0)