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2010年 04月 18日 ( 1 )

速水淳子「能を授業に取り入れよう」(朝日新聞「私の視点」2010年4月17日付)

朝日新聞掲載の「私の視点」はいつも楽しみな記事。「私の視点」は、一般の投書欄より字数が多く、トピックが多岐にわたる。ここが何よりもいいのは、それぞれの執筆者が現場に根差し現場からの発信だという点。ヘンな評論家のエセ分析や頭でっかちの学者の妄論や筆力不足の新聞記者の物語なんぞを読むより数段おもしろいし蒙を啓かれる。
昨日の2編の1編は速水淳子(慶応義塾志木高校教員)「能を授業に取り入れよう」。彼女の教え子に能楽師がいて「高校の国語の授業で教えてもらうようになって3年」。そんな彼女の授業経験から、彼女は「小学校から能が授業に取り入れられ、有名な謡曲の一節くらいは、誰でもどこでも口からすらすら出てくるような状態で高校に入ってくれるなら、高校における古典教育もガラッと違うものにすることができるだろう」と考える。能(謡)には「日本語の音声をもっとも正しく、美しく聞かせるためのすべての知恵が詰まっている。」。「すべての教室に能を」取り入れるのは「現在の日本語を生き生きと力強い音声言語としてよみがえらせる最善の方法」だと彼女は提言する。卓見ですよね。謡や百人一首や落語や素読を取り入れれば、子どもたちの日本語、どんなに豊かになることでしょうか。

実は僕は速水淳子先生とは違った形ですが、7月に「謡(うたい)」を日本語授業に取り入れようと思っています。事情を話せば長くなるのですが^^、富山国際学院のスタッフの増山満美子さんの関係で、数年前からロシアの子どもたちが学院で短期集中日本語教室を受講している。昨年は僕が「学院長1年生」ってことで教室開設の自信がなくお断わりしたのですが、今年は3週間のプログラムを組みました。僕には孫のような子どもたち(大汗)、果たしてうまくいくかどうか、「やってみんとわかんない~」でしょうね。ビートルズをもじれば「ヤアヤアヤア!ロシアのギャングエージがやって来る」かも(激爆)。
で、ときどき増山さんとそのプロジェクトについて打ち合わせしてるんですが、ガキっちょども^^を飽きさせないようにあれやこれや工夫が必要。45分×3の日本語授業をどうするかも工夫のし甲斐がありますが、授業以外の活動もあれこれやってみようと思っている。その一環として、ガキっちょに「茶道」や「越中おわら節」や「観世流」や「ポートラム」や「科学不思議体験」や「土人形作り」などの体験もいいかなぁと、増山さんや僕のネットワークを利用してあちこちに折衝中。「観世流」は、2月の「富山観世塾」で松友会の松下覚会長にお願いしたら、松下会長に快く引き受けていただけました。最近「メンター(mentor)」って言葉を知ったのですが、松下会長は僕の「メンター」のお一人になるでしょうね。ありがたいことです。で、子どもたちに畳で正坐は無理なんで、薪能(たきぎのう)ならぬ立居能(たちいのう^^。そんなのないかもしれませんが^^)になるでしょうね。「観世流なんて、外国の子どもに無理無理」って思われるでしょうが、やってみる価値があると思う。3月の「富山観世塾」例会で川田有紀子先生(観世流華川会)にもお話ししたら、川田先生からも協力できるというお返事がいただけました。4月の例会で小西弘通先生(観世流シテ方。能楽協会大阪支部常議員。富山松友会顧問)にもご許可(事後承諾になりますが)を願い出てみようと思っております。

速水淳子(慶応義塾志木高校教員)「能を授業に取り入れよう」から再び引用。
・・・まずは目の前で能楽師のあの声の迫力を体感させる。圧倒される生徒たちも、おうむ返しで口まねしていくうちに、能楽師の声の力に引っ張られてどんどん声が開かれていく。目の前でぐんぐん声が出てくるさまは劇的・・・
「どんどん声が開かれていく」「ぐんぐん声が出てくる」って実にすばらしい表現ですよね。
ロシアの子どもたちに観世流を披露し教えるなんて、ほとんど誰も思いつかん無謀な試みでしょうが、もちろん僕にはいくばくかの「勝算」があります。ロシアは詩の朗読が盛んなお国柄ってのも、その根拠の一つです。

やがて今から50年後、ウラジオストクでロシア人のおばあちゃんが孫娘に語る。
「マーシャ、私がお前くらいの時に、日本でКандзеっての習ったんだよ。おばあちゃん、それを誰に習ったかもう忘れちゃったけど、今でも覚えてる日本語の詩があるわ。日本ではおめでたい時に歌うと聞いた。マーシャの結婚式で歌ってあげようと思ってる」
「おばあちゃん、今歌ってみて」
「そうだね、忘れないように何回も歌っておいたほうがいいだろうね。おばあちゃん、どんどん物忘れがひどくなってるから。マーシャちゃん、聞いててネ。
た~か~さ~ごや~ このうら~ぶねに ほをあ~げ~て~」
「おばあちゃん。長生きしてマーシャの結婚式でそれ必ず歌ってね」
私はとっくに死んでいるのですが、そんな会話がペチカの前で交わされたらすばらしい。
Цунами・Кимоно・Хайку・Сакура・Самурайなどと並んでКандзеもロシア語になったらすばらしいでしょうね。

(注)
本記事中のロシア語はWikipedia日本語版「ロシア語」に拠りました。
by tiaokumura | 2010-04-18 20:07 | 謡を習う | Comments(0)