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2007年 10月 14日 ( 1 )

宮崎学『近代ヤクザ肯定論 山口組の90年』(筑摩書房)

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宮崎学
近代ヤクザ肯定論 山口組の90年
2007年9月10日 初版第4刷(1刷は同6月25日)
筑摩書房
1900円+税

「昨日の明日は今日ではない」とか。いつの時代も「過渡期」に違いないのだろうけど、僕の大学生時代は確かに「過渡期」で、例えばヤクザ映画の最盛期でもあった。今からは想像もつかないことだろうけど、スクリーンの中央に鶴田浩二がアップされ右隅に彼を狙う刃、その時観客席から「危ない!」の声(核爆)。あるいは高倉健と池部良が男の相合傘で殴り込みに向かう、バックには例えば「唐獅子牡丹」が流れ、観客が拍手する(核爆)。記憶が薄れているので間違いもあるかもしれないが、そんな時代の雰囲気だった。きっとボクなんかも、「文芸座」の6本立て(?)オールナイトがはねた後、肩を怒らせて早朝の池袋を帰途に向かっていたんでしょうね(自爆)。

本書の著者「宮崎学」(1945-)なる名前を僕が知ったのは、ほとんどの人がそうだと思いますが『突破者』で表社会^^に衝撃デビューした頃。京都の寺村組組長の息子、早稲田大学で日共系「あかつき行動隊」隊長といった経歴もさることながら、僕には彼が例のグリコ・森永事件の「キツネ目の男」に擬せられたエピソード^^が興味深かった。
本書は山口組初代・2代目から説き起こし、田岡一雄(1913-1981。1946-81山口組三代目)が目指したこと(及び実現しなかったこと)を中心に綴られる。関東会との関連、美空ひばりや鶴田浩二のこと、力道山のこと、児玉誉士夫や河野一郎らとの関係、ヒットマン鳴海清の最期など、あちこち拾い読みしていても、僕がこれまで漠然と「こうだったんではないだろうか」と思っていたことが、宮崎学の分析・解釈によって暗雲が切れるように明らかになっていく。そんなあたりもおもしろいのだが、なんと言っても読みどころは、田岡一雄の先見性(組内に「事業派」と「武闘派」を分立し田岡が占有する、など)とそれを紹介する宮崎の筆致である。何箇所か引用される田岡由伎(1954-。喜多郎と結婚、後に離婚)の「父親観」も効果的。もう一つの圧巻は「第七章」であろう。この章で宮崎は「柳川組」などをケーススタディに被差別部落・在日コリアン・ヤクザの重層構造について、彼以外の余人をもってしては不可能であろう考察を行っている。
宮崎は「近代ヤクザの根本的な変質」(p.357)を語る際に、梅川昭美(1979年に関西の大手銀行で「ソドムとゴモラ」を現出した男)と「ゲーム喫茶」の登場(宮崎曰く「素人がゲーム賭博や風俗店に手を出してくる・・・傾向」)の二つを採り上げている。確かにあの頃がエポックメイキングになるのだろう。

本書は約400ページ。「あとがき」によると、更に後続する本として『近代ヤクザ論序説』が近く上梓されるそうです。ヤクザ映画の予告編観てるみたいで^^、僕のように「安全地帯」にいる者には単純に続きが楽しみ。
by tiaokumura | 2007-10-14 12:31 | | Comments(0)