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山口富藏さんご出演のTV番組を見る

昨日火曜日は金沢日。朝、朝日新聞のTV番組欄を見てたら「あ、この番組、ぜひ見たい」ってのが紹介されてた。「でも、午後10時の放映に間に合うかな」とも思った。幸い、仕事の後の金沢での夕食がさっさと済ませられ、帰宅したのが9時半頃で放映に間に合った。
番組名はNHK-G午後10時~「プロフェッショナル」
茂木健一郎が司会(NHK女性アナウンサーも出ていた)で、「プロジェクトX」の後継番組なんでしょうか。人気がある番組みたいですが、僕は初めて見ました。その「プロフェッショナル」97回で取り上げられていたのが山口富藏さん。45分の番組で、こんなに熱心にTVを見たのは北京オリンピックの女子ソフトボール決勝戦後半以来で、今月では初めて。
山口富藏さんのお名前は寺本益英先生(関西学院大学経済学部教授)のブログで知りました。寺本先生とは、実弟(このブログでは「のぶ」)の取り持つ縁で2回お目にかかっております。寺本先生がコーディネートされた関学の授業「日本の食文化史」の講師のお一人が山口富藏先生(以下「山口さん」と書かせていただきます)なのです。

山口さんは京菓子「亀屋末富」の三代目。1937年のお生まれで御年71歳。関学経済学部をご卒業後銀座「松崎煎餅」で修業され、その後実家に戻られ父・竹次郎の下で修業、現在は菓子司(最高責任者)。

当夜の走り書きのメモを基に以下に番組を再構成しますが、間違いもあるかと思います。その辺はご容赦下さい。
①朝6時、象の柄のネクタイをして1Fの仕事場(厨房)に出る山口さん。「富藏」→ぞう→象、だそうです(爆)。こういう「遊び心」が匠・山口さんのバックボーンになっているのですね。菓子は規格が揃ったものでなく「羅漢のように不揃い」がいいそうです。
唐招提寺での茶会向けに、東山魁夷(1908-99)の襖絵をヒントにゆり根を使った菓子を考案。
女性の囲碁の会の40周年を記念した会の主菓子の注文を受ける。彼女らは山口さんにとって一見の客なのだが、そういう客にも懸命になる山口さん。客の要望を聞きどんなお菓子がいいか、岩波古典文学大系なども引っ張り出して研究を重ねる。「一期一会」の精神。
④父竹次郎の下での修業時、効率重視の菓子作りを考える山口さんに父は「自分でやったら、わかるさかいに」とだけ言う。父の死後、大きな仕事の注文が来る。生菓子1000個の発注。「効率」を考えた山口さんは、提供する時間を逆算して作られたんでしょうね、前の晩のうちに作り終える。朝、さて配達をと思った山口さん、愕然とする。菓子の表面が乾いてしまっているではないか。これじゃ「生」菓子じゃありませんよね。「その時は臍を噛む思いだった」と述懐する山口さん。若き日の大失敗。
⑤父の後をついで数年、父と同じように作ったつもりでも、客からは「お父さんのときとは、えらい違うな」と批判される。苦しい暗中模索時代が続く中、上述④の大失敗の時の家元夫人の「一期一会」という言葉が天啓のように脳裏を走る。「一人ひとりの客と正面から向かい合う」ことの大切さを知る。なじみ客も一見も、お菓子を食べていただく上では「一期一会」。歴史・芸術を猛勉強しながら菓子作りに励む山口さん。父の後を継いで10年経って、父と比較されなくなる。その10年の間、かつての客が「末富」離れしなかった(他に店へは逃げなかった)のは「すごい」と思った。つまり、客たちにも「なんとか富藏を竹次郎と同じ、いやそれ以上の腕にまで育ててやりたい」という希望・心意気があったんでしょうね。すばらしいことです。「文化」が育つ土壌、京都の文化の底力を感じました。その期待に負けなかった山口さんももちろんすばらしい。
⑥「伝統と革新」、菓子作りで大切なポイントだそうです。芭蕉の「不易流行」を連想しました。そして、前述の「遊び心」も大切なポイントとのこと。
⑦今回の番組のクライマックスになるのでしょうね。7月26日に茶会の仕事が入る。山口さんのお店に現れた依頼者が言う。「納涼茶会がある。今年は源氏物語千年紀。そこで『夕顔』の巻の『六条あたりの御忍びあるきのころ。内よりまかで給ふ中宿りに、大弐のめのといたくわずらひて・・・』にちなんだ菓子を用意してくれないか」。山口さんの苦闘が始まる。アイディアとしては、生菓子と干菓子で物語を紡ぐことに。
⑧「白き扇」から干菓子のモチーフが決まり、表面を飾るお香をどうするかと「源氏香の図」の「夕顔」も調べ、7月31日見本が完成する。ご本人曰く「会心の出来」。そして、そこからが山口さんのますます偉いところ・すごいところで、その「会心の出来」で決まりとするのではなく、お客さんに選択肢を提供するためにもう一品作り、あくまでもお客様に選んでもらうのだという。普通だったら「会心の出来」を客に提示し「これでどうだ!」とエバるところでしょうが、山口さんはあくまでも「お客様重視」なんですね。
⑨8月2日、依頼者来店。くずの生菓子、それに⑧の干菓子(扇の菓子と、これも「夕顔」の垣根にちなんだ檜菓子の2品)。ところが組み合わせてみて「緑―緑」で色のコントラストが悪い。この場面、僕も見ていてハラハラドキドキしてました。だがそんな危機も匠の日頃の蓄積がものを言って、難なく切り抜ける。
⑩8月8日納品。茶会とは襖を隔てた裏で菓子を用意する山口さん。茶会が終わって、源氏香の扇子を持った中年女性が山口さんに話しかける、「至福の時でした。本当にありがとうございました」と。匠にとって最高の褒め言葉でしょうね。
⑪司会者から「プロとは」と尋ねられた山口さんのお答え。「楽しめなければいけない。自分なりの嬉しさを持つ。プロを楽しんでやる」。
⑫順番が前後しますが、京菓子と和菓子の違いを尋ねられた山口さんのお答え。「公家文化を踏まえている。もてなしの食べ物である。京都の季節を織り込んでいる」。
⑬茂木が「モーツァルト交響曲40番」が好きだということで、山口さん、茂木のために創作した京菓子をスタジオでご披露。司会者冥利でしょうね^^。

私は日本語教師を生業としているので「プロの日本語教師」ということにはなる。だが、プロとしての深さは山口さんにはるかに及ばない。我が日本語教師人生で、学生(お客)と正面で向かい合っていると言えるのだろうか、授業(京菓子)にどれだけの想いを込め努力しているだろうか。残りせいぜい10年程度の日本語教師人生だが、「日本語教育司」に少しでも近づきたい、と、そういうことも思わせられた番組でした。

当夜見逃された皆様、再放送があったらぜひお見逃しなく!
こういう番組があると、TV受像機、なかなか捨てられませんね(照)。

いつか、山口富藏さんの京菓子が食べたい!
by tiaokumura | 2008-09-10 20:58 | 美味録08年 | Comments(4)
Commented by 寺本益英 at 2008-09-11 03:37 x
 奥村先生、すっかりご無沙汰いたしまして申し訳ございません。ずっと原稿やその他色々な仕事に追われ、疲れ切っていたのですが、つい先日野沢さんが激励に来てくださって、だいぶ元気が出てきました。
 山口先生にはここ5~6年ずっと講義に来ていただいています。いつも2回目の講義で、見事なお菓子の写真を見せていただいていますが、作っているプロセスを知ったのははじめてです。和菓子作りには、古典文学の知識とデザイナー的なセンスが必要なのですね。
 私は先生は日本語教育の素晴らしい「プロフェッショナル」だと思います。ブログを拝見していると、なるほどそうかと共感するご意見にしばしば出会うからです。(野沢さんの考え方や好みとも不思議とぴったり合うんですよね。年末にはお言葉に甘え、仙洞御所をご案内いただく予定です。)
 またお目にかからせていただける機会を楽しみにいたしております。お体お大切に、一層ご活躍ください。
Commented by のぶ at 2008-09-11 09:02 x
 関西地区にお出での際には、是非声を掛けてください。例え10分でも結構ですので、お会いしましょう。
 山口さんのお菓子は午前中でなければ手に入りませんが、本店に立ち寄って一緒に食べましょう。
Commented by tiaokumura at 2008-09-13 20:35
寺本先生、お忙しいにもかかわらずコメントをお寄せくださりありがとうございます。
山口先生のTV番組は、時間を忘れ引き込まれて見ておりました。僕のような視聴者、全国にたくさんいたことでしょう。寺本先生がコーディネートされる方々はいつもすばらしい方々ばかり。先生のお人柄によるものと、いつも感心しております。ああいう授業が受けられる関学生、ちゃんとわかってるんかしらん、自分たちがどれほどすごい方々の講義を受けられているかを^^。
「プロ」としては生涯未熟で終わると思います。それでも絶望することなく、昨日より今日、今日より明日と、1ミリずつでも進歩していけたらと思って、日々の活動に取り組んでおります。
仙洞御所、ご一緒できず残念無念。また何かの折にお会いできるのを楽しみにしております。
先生も御身ご大切に。コメント、本当にありがとうございました!
Commented by tiaokumura at 2008-09-13 20:37
のぶ様、今回は準備バタバタでご連絡せず仕舞いでした。年内に関西方面はもうないかもしれませんが(23日、海外出張で関空に行きます)、チャンスがあったらご連絡します。
山口さんのお菓子、ぜひ食べたい! その節は案内してくださいね。


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