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復刻版岩波写真文庫から2冊

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*写真左
写真・熊谷元一
編集・岩波書店編集部
    岩波映画製作所
一年生-ある小学教師の記録
岩波書店 復刻版岩波写真文庫
       赤瀬川原平セレクション
2007年9月27日 第1刷
700円+税

*写真右
監修・柳宗玄
写真・浅野信二郎 安堂信也 飯島一次 遠藤元繁 柳宗玄
編集・岩波書店編集部
    岩波映画製作所
パリの素顔
岩波書店 復刻版岩波写真文庫
       田中長徳セレクション
2008年3月5日 第1刷
700円+税

小学1年か2年のとき、「舌切り雀」だったと思うが学芸会でお爺さん役をした。だが実母は重い病でそれを見ることができなかった。どなたかが撮ってくださった写真を母が見て涙を流していた、というのを後に聞いた。母はその後まもなく亡くなったので、僕の唯一の母親孝行になったのかもしれない。あの当時(1950年代)の「写真」は、デジカメ時代の今からは想像もできない「重い価値」があったと思う。
一年生-ある小学教師の記録』は長野県の小学校の先生だった熊谷元一(1909-)が1年間にわたって子供たちの生活を撮ったもの。僕は富山県の小学生でこの写真集の子供たちより1~2学年上になりそうなのだけれど、写真集にはあの当時の僕たち、級友たち、先生方や母親たちが写っていると言っていいだろう。父親たちの姿がほとんどないのは、仕事のためかあるいはアジア太平洋戦争のためかもしれない。木造校舎をバックにした記念撮影・原っぱでの子供たちの集合写真を見ていると、思わず自分や友達を探したくなる。おかっぱ頭の女子・いがぐり頭の男子って絶対自分たちである。貧しい時代であったことは間違いないが、貴重な精神に満ち満ちた時代であった。
お恥ずかしい限りで僕は知らなかったのだが、熊谷元一は、小学校教師としても写真家としてもすばらしい方。名取洋之助(1910-62)が絶賛している。多くの方、とりわけ55歳以上の方に手にとっていただきたい写真集である。

岩波写真文庫は1950年代に計286冊刊行されている。その中から「赤瀬川原平セレクション」として復刻された1冊が『一年生-ある小学教師の記録』、「田中長徳セレクション」として復刻された1冊が『パリの素顔』である。パリは今は日本から飛行機で約半日だが、この当時は日本から船で片道約40日。
パリは2000年夏、妻と二人で1週間過ごした。この写真集のパリはそれより50年ほど前なので、ルーヴル美術館についてだけでも、ピラミッドがないとか「モナリザ」の展示が異なるといった点はあるが、それでもやはり「パリはパリ」、パリ旅行を思い起こすよすがは随所に見られる。日本経済はその後フランスに追いつき追い越したのかもしれないけど、この写真集を見ていると、精神というか文化というか、日本は永久にフランスをパリを凌駕しえないのだろうと思う。
文章は柳宗玄(1917-)なのだろうか。パリに通暁した人の名文である。

追記
熊谷元一写真童画館のHPはこちら
by tiaokumura | 2008-04-01 18:33 | | Comments(0)


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