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2017年度卒業式・学院長式辞

例年になくひどかった雪も今やほとんど残っておらず、いくばくか春の足音が感じられる本日この日、富山国際学院第24回卒業式を行いますことは、まことに喜ばしいことです。富山国際学院教員13名を代表して一言式辞を述べさせていただきます。


私は皆さまのような留学経験がありませんので、偉そうなことは言えませんが、皆様の富山での留学生活は決して楽ではなかったと思います。

ゴミの分別がわからず大家さんに叱られたこと、新しい日本語がわからなくて悔し涙を流したこと、アルバイト先でいわれのない叱責を受けて怒りを禁じえなかったこと、故郷の家族の病気を耳にしながら帰るに帰れなかったこと、交流会で出会った日本人女性にわけもわからず嫌われたこと、ストーカーめいた日本人のおじさんにアパートやバイト先で困らされたこと、富山の猛暑にも大雪にも悩まされたこと、中国語で地鉄は地下鉄で看板に「富山地鉄」とあったので富山は地下鉄が発達してるのだなあと勘違いしたこと、バイト先の最初の月給が8万円でネパ-ルじゃ考えられない金額だったもので金銭感覚が狂って無駄な買い物をしたこと、ベトナナムじゃありえないことですがコンビニでエッチな雑誌を発見し本体価格741円税込み800円を払おうとしたら女子高校生がレジで恥ずかしかったこと、富山は雪が降るからでしょうね信号が横じゃなく縦に3つで感心したこと、などなど、さまざまな留学体験があったことでしょう。


一方で、母国にいたときは、料理も買い物も掃除もひょっとして自転車にすら乗れなかったような若者が、今はこうして誰の助けも借りずに、すなわち自分の力で生きる、自立した生活が送れるまでに成長しています。

私は日本語はもちろんネイティブで富山弁もペラペラですが、恥ずかしながら外国語は全くできません。しかるに皆さまは、上級学校に進学できる日本語力、自分の率直な思いが伝えられる日本語力、日本で生きていける日本語力を、2年ないしは1年半という短い期間で習得されました。まことにすばらしいことであります。皆さまを受け入れた日本語学校の責任者として、皆さまを誇りに思いこの日を喜ばしい気持ちで迎えております。

日本語人」という言い方がありますが、皆さまは今や立派な「日本語人」です。


ところで、こういう卒業式の場では何か皆さまへ「はなむけの言葉」というものを述べるのが慣例です。

ここで質問。日本で最もお金持ちな日本人は誰でしょう?

たぶん、柳井正(やない・ただし)さんです。ユニクロですよね。

で、2番目は?これもたぶんですが、孫正義さんです。ソフトバンクですね。

彼は、在日韓国人二世で、どういうことかというと、戦前の日本の実質的な植民地であった朝鮮半島(韓半島)からやむをえない事情で日本に来た人の子供です。そして、皆さまは容易に想像できることでしょうが、彼は多くの「在日」の人と同じように、さまざまな差別・偏見にさらされて成長しました。彼は、成績が優秀だったんでしょうね、また、彼自身も日本での教育に限界を感じたんでしょうね。皆さまは日本留学ですが、孫さんはアメリカ留学。アメリカでソフトウェアの会社を設立もしました。やがて日本帰国後、皆さま誰もが知っているソフトバンクを設立しました。孫正義さんの、グローバルなビジネス界での活躍は皆さまもよくご存じでしょう。

ここで彼の言葉を2つ、引用したい。

まず1つ目。

障害物に突き当たったとき、それを嘆いてはならない。それは成長の機会を提供してくれているのだから

繰り返します。

「障害物に突き当たったとき、それを嘆いてはならない。それは成長の機会を提供してくれているのだから」

皆さまは、これからもいろんな障害物=困難に出会うでしょう。そんなときにそのことを嘆いていてはダメなのです。困難を乗り越えてこそ人間は成長できるのです。困難は成長のチャンスだと思ってください。障害物がないところに成長もない、のです。

もう一つ、孫正義さんの言葉。

達成感を得たら、その時点で成長は止まる

繰り返します。

「達成感を得たら、その時点で成長は止まる」

達成感を持つことはもちろん悪いことではありませんが、そこで終わってはダメだということです。いい結果が出てもそこで満足していてはダメだということですね。更なる成果を目指して新たな目標に成長してください。


こうして富山国際学院の学生・教師が一堂に会するのももうあとわずかです。このあと富山を離れる人・富山に残る人、大学に進学する人・専門学校に進学する人など、それぞれの道を進んでいかれます。

本日、ベトナム社会主義共和国・中華人民共和国・ネパール連邦民主共和国出身の25名の若者が富山国際学院というステージから旅立ちます。皆さまが次のステージでも大いに活躍され、豊かで明るい未来を切り開かれることを願って、学院長式辞とさせていただきます。


2018年3月9日

富山国際学院

学院長 奥村隆信


by tiaokumura | 2018-03-09 10:02 | 僕は学院長9年生 | Comments(3)
Commented by おばちゃん at 2018-03-11 08:42 x
こんにちは。
大変ご無沙汰致しております。
無事、卒業式を迎えられ、おめでとうございます。
私も東京で日々「障害物」に突き当たっておりますが 、時々歌舞伎座でパワーをもらいながら(笑)、少しずつ進んでおります。
3月とはいえ、富山はまだまだ寒いのでしょうね。
お風邪など、召しませんように…。
Commented by tiaokumura at 2018-03-18 21:18
おばちゃん様、久々のコメント、ありがとうございます。
卒業式、入学式のスピーチ、いつも悩みの種。早く次の人にやってほしい(笑) あの日はA学園も卒業式だったみたいです。
9月に上京予定。歌舞伎座、ぜひ初観劇を。チケット、けっこう大変なんでしょうね。
新年度からも同じ学校でしょうか。いい授業を、お互いに。
Commented by おばちゃん at 2018-03-19 18:58 x
ご返信、ありがとうございます!
新年度も、同じところで頑張ります。
歌舞伎座のチケットは、演目や出演者によって取りやすさが全く違います(笑)
もし、チケットが売り切れていても、4階の「一幕見席」は当日買うことができます!


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