人気ブログランキング |

「特定非営利活動法人 富山国際学院」、まもなく10周年

2005年9月12日に認証を受けた「特定非営利活動法人 富山国際学院」の設立趣旨書は、当時の学院長の岸井みつよさんのお薦めもあって主に僕(当時、58歳!)が作成にあたった。作成にあたっては次のことに留意した。
①「~的」「カタカナ語」の使用を最小限にとどめる。
②読点・段落に配慮し、日本語として論旨明快かつ格調高い散文にする。
③主語(主体)を明確にする。
④他言語に翻訳可能な日本語にする。
富山国際学院がNPOに組織替えしてこの9月で10年になる。移転準備のため休日出勤となった穏やかで暖かな春分の日・3月21日、ふとNPO設立趣旨書のことを思い出した。設立趣旨書の「5つの責務」はいまだ充分果たしえていない。趣旨書には青臭い稚拙な部分もあるが、趣旨書に述べた状況分析は、2015年の今も決して古びていない(それは残念かつ悲しいことにもなるのだが)。
富山国際学院は、校舎移転後も厳しい道は続くが、半歩ずつでもいいから前進していきたいものである。後の人々が日本語教育に喜びを感じられることを願って。

特定非営利活動法人 富山国際学院 設立趣旨書
北陸地区初の日本語学校として1992年7月に富山国際学院が開校して13年余になる。途中で廃校の危機に直面したこともあったが、スタッフの情熱と工夫、協力者の理解と支援により、今日に至っている。
私たちは、日本の高等教育機関への進学を目指す就学生、富山県内の企業・自治体の外国人就業者、日本人を配偶者とする外国出身者、日本語・日本文化に関心を抱く外国人、県内在住の外国人子女などに対する日本語教育経験がある。そんな日本語学習者たちにほぼ共通することが2つある。1つは、質の高い日本語教育を受けたいという欲求が強いこと、もう1つは、日本語習得の度合がそのまま夢の実現と生活の安定に結びついていることである。
私たちの携わる日本語教育においては、優秀な日本語教師の不足・日本語学習者の在日生活の困難・日本及び日本語に対する魅力の減少など、その現在と未来は必ずしも楽観できるものではない。
このような状況認識の下で、今、私たちは「特定非営利活動法人富山国際学院」として出発しようと思う。私たちの組織は、私たちに課された以下の5つの責務の実行を目指すものである。

1)質の高い日本語教育の提供
「質の高い日本語教育」は日本語学習者(以下「学習者」)の権利であり日本語教師(以下「教師」)の義務でもある。私たちは、自らの能力・体力の限界を口実にはせず、学習者のさまざまなニーズや異なるレベルに応えられる受入れ体制・カリキュラムを準備し実行しなければならない。
と同時に、組織の核である教師が安心して活動に専念できる、安定した経済基盤の供給に努めなければならない。
2)教師の資質の向上と自己研鑽
私たちは、学習者の性別・年齢・母語・宗教・文化背景などに偏見を持たず、教師として高度な教育技術・能力を身につけなければならない。
そしてまた、私たちは想像力と好奇心を持続し、学習者より日本語能力が高いこと以外に生身の人間としての魅力・識見を身につけなければならない。
3)学習者を取り巻く環境の整備
情報社会の進展にもかかわらず、無知・無関心・無理解に基づく「外国人」に対する偏見と差別は依然として深く根強い。私たちは、「外国人」であるというだけでいわれのない差別や偏見が存在する社会を拒絶し、学外に学習者への支援者・共感者を増やす努力を続けなければならない。
また、私たちと志を共にし共通理解を持つ個人・組織を発掘し育成していかなければならない。
4)日本語教育を共通部分とするネットワーク作り
日本人が好むと好まざるとにかかわらず、日本社会の国際化は進む。未熟微力な私たちは、私たちの活動に関連する個人・組織と、時間・空間の壁を超え、有効な関係を開拓し保持しなければならない。
ネットワークの広がりと充実は、私たちの活動をより強固にし、同時に、学習者の自己実現に大きな利益となるであろう。
5)日本語教育を通じての多文化共生社会の実現
言語を学ぶことは、同時にその言語の持つ価値観・発想に触れることでもある。私たちは、かつて日本語が侵略の手段として使われた過去の苦い経験を忘れてはならない。現在及び将来の日本語教育が、日本語の価値観の強制であったり学習者のアイデンティティを損なうものであってはならない。
私たちは、言語教育の持つ危険性を自覚し、学習者に対していたずらに日本社会への同化を求めず、互いの違いを尊重し認め合う多文化共生の道を探らなければならない。

私たちは、21世紀の日本語が学ぶに値する言語であることを信じつつ、地方の一小都市にあっても最良・最高の日本語教育が可能であることを世界に発信していきたい。

2005年9月 富山国際学院

2015年3月21日(注)
趣旨書の「就学生」は現在は「留学生」です。学院では「語学留学生」で通称。
by tiaokumura | 2015-03-21 12:53 | NPO | Comments(0)


<< 『チャップリンの放浪者』『戦艦... 癌日記:僕の5年生存率は7%台... >>