人気ブログランキング |

吉本隆明全集(晶文社)

f0030155_1318508.jpg戦後の思想家を一人選ぶとすると、鶴見俊輔や丸山眞男や広松渉や埴谷雄高や加藤周一や森有正らもランク入りするだろうが、きっと
吉本隆明(よしもと・たかあき1924-2012)
がダン凸の1位になるでしょうね。
僕が吉本隆明(あの当時は「りゅうめい」が一般的だった)を初めて知ったのは、大学進学で上京した1965年(東京オリンピックの翌年)、進学先の大学の同級生のH君(今は故人)から。H君は僕の同級生だが2歳年上で秋田出身であった。地方出身者同士のよしみもあったのでしょうね、彼と親しく付き合うようになり当時雑司ケ谷に会った彼のアパートにもたびたび訪れた。彼曰く「『試行』という同人誌のような雑誌があり、そこに吉本隆明と云うすごい日本オリジナルな思想家・活動家が書いている」といったような具合で、吉本を教えてもらった。僕は後に時枝誠記(ときえだ・もとき1900-67)に関心を持ち、吉本『言語にとって美とは何か』あたりが僕がわからないままに吉本を熱心に読むようになった著作かもしれない。
この春に刊行が開始される「吉本隆明全集」の内容見本晶文社から送られてきた(アップした写真はその表紙)。

長く深い時間の射程で考え続けた思想家の全貌と軌跡がここにある
吉本隆明全集
全38巻・別巻1
A5変型・上製カバー装 各巻590ページ(平均)
定価:各巻6000円(平均)+税
第1回配本 3月上旬 第6巻
 初年度は3カ月に一巻刊行
 次年度以降は隔月で刊行予定


「転位のための十篇」は第4巻(他に「固有時との対話」「マチウ書試論」など)、「擬制の終焉」は第6巻(他に「戦後世代の政治思想」など)、「言語にとって美とは何か」は第8巻(単独)、「自立の思想的拠点」は第9巻(他に「カール・マルクス」など)、「共同幻想論」は第10巻(他に「心的現象論序説」など)、「心的現象論」は第30巻(単独)といった構成です。全集の多くがそうであるように編年体の編集です。「心的現象論」は1970-1997ということで終わりのほうの巻に収録。
第37・38巻は「書簡」、別巻に「写真アルバム」「生活史年譜」「著作年譜」。

吉本と富山の関わりを知ったのは30年ほど前だったか。以下、「内容見本」の「略年譜」から一部引く。
1945年4月下旬頃 日本カーバイド工業魚津工場へ同期2人と赴く。・・・製造装置を作る段階から携わる。同社の寮で暮らす間、農村動員で埼玉県大里村で働き、また立山へ登山。・・・8月15日 敗戦の放送を工場で聞き衝撃を受ける。程なく魚津を離れ・・・

「内容見本」ではハルノ宵子(はるの・よいこ1957-。漫画家。吉本の娘、よしもとばななの姉)の「ご挨拶」がユニークでおもしろい。以下一部引用。文中の”おじ様方”は僕たちを指すんでしょうね。
・・・『こんな時、吉本ならどう考えるだろう』と思った”おじ様方”あなたは、もう充分に答えを得ているはずです。ぜひこの全集書斎に、より”箔”を付ける為の小道具として、あるいは高さ調節自由の昼寝用枕として、全集ご購入頂くことを希望します。・・・
よしもとばなな(よしもと・ばなな1964-)は「父と全集」を寄稿。ばななの父親像。
・・・散歩と買い物と夏に海に1週間行くことと2時間ドラマを観る以外には特に娯楽もなく、ほとんど旅行もせず、女遊びもしないし教授にもならないし、酒にもグルメにも興味がなかった父。・・・

「内容見本」には、鶴見俊輔・上野千鶴子・福島泰樹・糸井重里・鷲田清一・中沢新一・見城徹が「推薦のことば」を寄せている。この内、上野と福島が『転位のための十篇』「ちひさな群への挨拶」を引用している。これは僕が吉本隆明の追悼記事(こちら)でも引用している。
ぼくの孤独はほとんど極限(リミツト)に耐えられる/ぼくの肉体はほとんど苛酷に耐えられる/ぼくがたふれたらひとつの直接性がたふれる/もたれあふことをきらつた反抗がたふれる/ぼくがたふれたら同胞はぼくの屍体を/湿つた忍従の穴へ埋めるにきまつている/ぼくがたふれたら収奪者は勢ひをもりかえす
だから ちひさなやさしい群よ/みんなのひとつひとつの貌よ/さやうなら
(『転位のための十篇』「ちひさな群への挨拶」:『吉本隆明全著作集1定本詩集』pp143-144)。

吉本隆明全集」、残念ながら僕は買えないがどこかで読んでみたい。
by tiaokumura | 2014-01-12 13:18 | | Comments(7)
Commented by のぶ at 2014-01-13 16:28 x
富山第一高校、大逆転の優勝おめでとうございます。
Commented by 哲ちゃん at 2014-01-18 09:41 x
『吉本隆明全集』がいよいよ出るのだなぁ!
順調に刊行が進むとして,完結まで丸7年かかる。出版社として,よくぞ踏み切ったものと,エールを送りたい。

大学2年のときだったか,吉本の詩「固有時との対話」のことを貴兄から教えてもらったのが,ぼくの吉本との出会いだった。その後,ずいぶん彼の作品を読んだものです。

全集,ぼくも読みたい。
Commented by tiaokumura at 2014-01-18 15:05
のぶ様、地元の視聴率、すごかったみたい。60%台だったか。僕もずーっと観てました。
県と市が、昨日、「栄誉賞」みたいのをそれぞれ贈りました。今年の富山県10大ニューストップ、富一サッカーで決まり、でしょうね。
Commented by tiaokumura at 2014-01-18 15:15
哲ちゃん様、久々のコメントありがとうございます。
「完結まで丸7年」って、僕、気づかなかった。さすが業界人、「出版社として,よくぞ踏み切ったものと,エールを送りたい。」って、なるほど。
吉本を僕が教えたって、全く記憶にない。そうだったんかなあ。それが「固有時の対話」だったなんて、我ながら「すごい」と思った(激爆)。
全集、紀伊國屋で立ち読み(腰掛読み?あそこ、それ、できます)かなあ、自分^^。
Commented by 哲ちゃん at 2014-01-18 18:54 x
ぼくが携わっていた『数学セミナー』には,TEA TIMEという随筆欄があって,数学を専門としない著名人に,数学についての思い出や考えなどを書いてもらっていた。1970年4月に入社してまもなく,編集会議でこの欄の執筆者候補が話題になったとき,ぼくが吉本龍明の名前を挙げたところ,編集顧問の遠山啓先生が,「そうだ,吉本に頼んだらいい」と,即座に賛成された。
その年の11月号に掲載された「思考の話」をpdfにてメールで送ります。
校正のとき,一二点,確認すべきことがあったので,吉本さんに電話をして,少し話をしたのだけれど,とても丁寧で,気持ちの好い応対をされたことが強く印象に残っています。
1979年9月,遠山啓先生が亡くなられて,ぼくは葬儀で受付の手伝いをした。夕方近くに吉本さんが来られて,知り合いの人たちと何やら話しておられた姿を,ぼくは遠くからときどき見ていたのだった。
Commented by 哲ちゃん at 2014-01-18 19:13 x
急いで修正。
先のコメント中,「隆明」を「龍明」としてしまった。変換ミスです。
Commented by tiaokumura at 2014-01-22 07:29
哲ちゃん様、数学セミナーの件、情報提供ありがとうございます。記事、難しすぎて僕にはようわからん(大汗)。文中の娘は長女のほうでしょうね。記事中の写真、40代?、かっこいい。
近日中にブログ記事にします。


<< 富山第一高校 ありがとう! 植出耕一君、ご逝去 >>