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若松孝二監督『千年の愉楽』+井浦新・大西信満トーク&サイン会

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千年の愉楽
2013年 日本 日本語 118分
監督:若松孝二(わかまつ・こうじ1936-2012)
原作:中上健次(なかがみ・けんじ1946-92)
脚本:井出真理
キャスト:寺島しのぶ(オリュウ) 高良健吾(半蔵) 高岡蒼佑(三好) 染谷将太(達男) 佐野史郎(礼如) 彦之助(井浦新) 他
女は孕み 子が生まれ 路地から人が溢れ出す あの世よりはこの現世(うつしよ)へ 生きてあることこそバンバイよ・・・(映画リーフレットより)
紀州が生んだ鬼才・中上健次の代表作『千年の愉楽』を、若松孝二が映画化。舞台となったのは、眼下に美しい尾鷲湾を見下ろし、背後には紀州の深い緑が連なり、斜面に建つ趣ある家々を縫って小さな路地が巡る、三重県尾鷲市の静かな集落、須賀利。昭和の香りが色濃く漂うこの集落で若松孝二が描き上げたのは、匂い立つような命、不条理ゆえに美しい命の賛歌である。(映画リーフレットより)
公式サイト:こちら

映画冒頭、花の窟(いわや)のアップ。タイトルの後、小屋の中で中本彦之助の死ぬまで。「俺らはの、浄らな一党を作るため、遠い昔に打ち負かされて、穢れを背負わされたんじゃ」、苦しげに呻きながらそう礼如に訴え、やがて断末魔の悲鳴とともに没する彦之助。次の場面は一転し、同じその日にオリュウが彦之助の子を取り上げる出産場面。子は半蔵と名付けられる。そして映画は、「中本の血」をもつ半蔵・三好・達男の物語(成長と性と死)が主にオリュウの視点から描かれる。
「路地(部落)」「血」「性」「生と死」がこの映画の主テーマということになるか。若松は言う。
人は、生まれて、死んで、また生まれて、死んでいく。その営みの繰り返しだ。人が人を差別するこの社会の中に、次々生まれては死んでいく。あまりに不条理で、だけど、だからこそ、中上が思わず文章で描かずにはいられなかった美しさがあり、僕がその文章に触発されて作った映像がある。不条理だから、表現が生まれたのだ。(映画パンフレット「生きることは不条理だから美しい」)

映画の後、井浦新(いうら・あらた1974-)と大西信満のトーク。井浦のトークは若松監督と(当ブログこちら)、安藤サクラと(当ブログこちら)に続いて3回目。井浦は若松監督の葬儀で弔辞を読んでいる。弔辞のもう一人は足立正生(あだち・まさお1939-)。井浦の発言から。
①若松組へのきっかけ。足立正生『幽閉者 テロリスト』に出演中、「若ちゃんが連合赤軍、撮るって」と聞いた。2006年、若松プロにTELし同映画出演希望を告げる。電話の相手は若松だった。
②若松監督は自ら最前線で宣伝活動もする。『千年の愉楽』は、監督の優しさが詰まっている作品である。
③若松作品出演は5作目で、今回は冒頭のワンシーンに出演。彦之助役。セリフは台本では標準語だったが、自ら和歌山弁に直した。監督は大いに喜んでくれた。監督は映画撮影初日のファーストカットに「願をかける」。今回、自分の出演シーンがそうなって、それがいい出来栄えでよかった。
④そのシーンは都内河川敷の掘立小屋を借りての撮影だった。その小屋はセットではなくホームレスの方の住居。監督は撮影後そのホームレスに「いいものが撮れた。ありがとう」と感謝した。
⑤若松監督から学んだことの一つは「仁義」ということ。筋を通す、人として当たり前のことを当たり前にやる、人を差別しない。
⑥『自決の日』で芸名をARATAから本名の井浦新に変更することを監督に言ったら、大いに叱られたが、そのあと受け入れてくれた。
会場質問ありってことで僕も挙手したんですが当たりませんでした(泣)。井浦さんには、仕事を選ぶ基準、今後やってみたい役柄、を聞きたかった。

トークの後はサイン会。前回もそうでしたが、並んだ行列の9割くらいが女性。しかも20代・30代が半分以上。中上人気。若松人気もあるでしょうが、一番は井浦人気なんでしょうね。自分の番になってサインしてもらいながら、「井浦さんのファンです。日曜美術館、見てます」と言い、さらに「大和ハウスのCM、ビックリしました」って言ったら、苦笑されてたみたい。

若松孝二監督は『千年の愉楽』パンフレットの「生きることは不条理だから美しい」の最後に
中上と、あの世で再会したら.彼の感想を聞かせてもらいたい。
と結んでいる。今頃は「あの世」で酒を酌み交わし、けんかし、大いに語り合っていることでしょうね。
by tiaokumura | 2013-06-08 14:07 | 映画 | Comments(0)


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