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寒く長い夜は、こたつみかん^^で読書

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川上弘美(かわかみ・ひろみ1958-)選
精選女性随筆集 九 須賀敦子
2012年10月10日 第1刷
文藝春秋
1800円+税

中沢敦夫(なかざわ・あつお1954-)・宮崎衣澄(みやざき・いずみ1975-)
暮らしの中のロシア・イコン
2012年10月20日 第1刷
東洋書店(ユーラシアブックレット)
800円+税

金子哲雄(かねこ・てつお1971-2012)
僕の死に方 エンディングダイアリー500日
2012年12月11日 第2刷(2012年11月27日 初版第1刷)
小学館
1300円+税

瀬戸川宗太(せとがわ・そうた1952-)
懐かしのテレビ黄金時代 力道山、『月光仮面』から『11PM』まで
2012年11月15日 第2刷(2012年10月15日 初版第1刷)
平凡社(平凡社新書)
760円+税

川上弘美選『精選女性随筆集 九 須賀敦子』
須賀敦子(すが・あつこ1929-98)も川上弘美も同じ頃に知り、今でもずっと好きである。川上の須賀文章感は「繰り返し修正されたデッサンが、満を持してどっしりとした絵の具で書かれた」(川上「幸福」p9)であって、なるほどその通りだと思う。単行本・全集・文庫と版型を変えて3回読んで、またこの随筆集で4回目を読む作品もあるが、飽きるということもなく須賀の散文のリリシズムに「まるで自分がいつか霧のミラノにいたことがあったような、ナポリの舗石を踏んで靴音をたてたことがあったような、そんな心もち」(p8)になる。
須賀が癌告知を受けたのは1996年・67歳のときである。
この随筆集シリーズは他に、森茉莉、倉橋由美子、白洲正子、向田邦子、沢村貞子らがある。

中沢敦夫・宮崎衣澄『暮らしの中のロシア・イコン』
私はまだ2回しか訪れたことがないが、富山県上市町(かみいちまち)に西田美術館がある。全国的な知名度はどうか知らないが、イコンコレクションでは玉川大学などと並ぶのではないだろうか。しかもそこが民間の美術館であることは驚きである。著者の中沢は富山大学人文学部教授(中世ロシアの文学・文化史)、宮崎は富山高等専門学校准教授(ロシア宗教史、ロシアイコン美術)で、地の利を生かした著述になろうか。
私たちがイコンに抱く最初の疑問は「偶像崇拝」を禁じているはずのキリスト教でなぜイコンが、というものであろう。そのことについて「はじめに」では以下のように述べられている。
イコンは、普通には見ることのできない「神の国」が映し出された「窓」のようなものであるとされ、・・・「絵画」とは異なることが強調されました。まず最初に、神的な存在が投影した像が「原型」としてあり、目の前にあるイコンは・・・その原型の模写のひとつにすぎないと考える・・・。/教義によれば、イコンは・・・宗教的・美的な感動を求めるべきではなく、信徒がその前で祈り、神的なものを想起するための手がかり・・・(p5)
異教徒の私が「鑑賞」するのはいけないことなのかもしれないが、イコン、なぜか懐かしい気持ちになって観ています。本書、図版49点中、表紙見返しの「聖人暦」を始めイコンの3分の1くらいが西田美術館所蔵です。
余計なこと^^2つ。PCの「アイコン」ってイコンの英語読みです。もう一つ、本書は「家庭の中のイコン」「人の一生を見守るイコン」「年中行事の中のイコン」「作り手から見たイコン」と「はじめに」「おわりに」の構成なのですが、著者の執筆分担が明記されていないのは不親切。

金子哲雄『僕の死に方 エンディングダイアリー500日』
よく売れている本なんでしょうね、発売3週間弱で2刷。博文堂さんに注文したんですが、取次が違うということで入手できず(東販と日販のことのようです)、土曜日に歳暮を買いに行った大和デパートの帰りに、紀伊國屋書店で買いました。
昨年末期癌発見以来、癌関係の本はフィクション・ノンフィクション合わせて10冊くらい買っただろうか。本書は癌ではないが、「肺カルチノイド。/・・・/悪性の腫瘍に体がやられてしまう病気で、症状はがんとほぼ同じ。発症は10万人に1人とのことだったが、私のカルチノイドはかなり特殊な組織型というもので、ほとんど症例がないのだという。」(p76)。そんな彼が闘病生活の果てに辿りついた心境、「天命に従うしかないのだろう。/自分の人生を選択してきたつもりだったが、最後の最後になって、終わりの瞬間を選べないとは。/でもいい。/自分は最後まで、自分に正直に生きてきた。濃い人生だった。そのことを、誇りに思う。」(p162)。
妻の金子稚子(かねこ・わかこ)の「読んでくださる皆さまに」「あとがき」もすばらしい。「会葬礼状」は金子哲雄本人によるもので、できれば私もこれを見習いたい。

瀬戸川宗太『懐かしのテレビ黄金時代 力道山、『月光仮面』から『11PM』まで』
6歳違う(1946年生まれの僕が上)と観ていたテレビもけっこう違ってくるようだ。僕の初期のテレビ体験は『ホームラン教室』『怪傑ハリマオ』『少年探偵団』『赤穂浪士』『私の秘密』『若い季節』などになるかなあ。瀬戸川は東京在住で父親がTV関連の仕事ということで、TV環境が僕と違って当然なんでしょうね。僕の生まれ育った富山は、TV初期はNHK一般・NHK教育・北日本放送(KNB。民放)の3チャンネルだったんじゃないかなあ。
本書、「日本テレビ史年表」「番組名索引」が付く。

彼の国に「カウチポテト」あり。この国では「こたつみかんで読書」が寒く長い冬の夜の楽しみじゃないでしょうか^^。
by tiaokumura | 2012-12-10 08:46 | | Comments(0)


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