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ある癌患者(男性・64歳 胃癌ステージⅣ)、4つの不安

はじめに:ブロガーからのお断わり
誤解を招かないようにここでお断わりしておきますが、当ブログのカテゴリー「癌日記」は、あくまでも奥村一個人の体験記です。「癌=不治の病」「全ての癌=死に到る病」では決してありません。当ブログの「癌日記」がいたずらに恐怖心をあおることのないようにしたい。このことは、カテゴリー「癌日記」を立てた時に書いておくべきだったのですが、遅まきながらここでお断わりしておきます。
以下に述べる「4つの不安」もあくまでも奥村一個人の現在の率直な心境であり、これをもって癌患者に過剰一般化して適用されることのありませんように。


10年ほど前までは、癌を本人に告知すべきかどうか論が分かれるところもありましたが、今どきは本人への癌告知が普通になったんでしょうね。告知することで本人が病状をきちんと把握し闘病生活に向き合える・医療者側も治療に専念しやすい、といったメリットがあるんでしょうね。癌以外でもそうなんでしょうが、インフォームド・コンセント、セカンド・オピニオン、緩和ケアなどといった言葉もすっかり市民権を得たようですし、化学療法・放射線治療など癌の医療技術の進歩も目覚しいみたいです。医療現場でもよく使われる「生活の質(Quality of Life=QOL)」も癌患者には大切なんでしょうね。癌告知は時代の趨勢なんでしょうね。
ただどうでしょう、告知された本人のおおかたの想いは、1997年2月6日、江國滋が食道癌を告知された日に書き残しているように
あっというまの1日でもあり、生涯ではじめての長い長い1日でもあった。
残寒やこの俺がこの俺が癌

でしょうね。引用は、江國滋『おい癌め酌みかはさうぜ秋の酒』(新潮文庫p23)より。
そして、闘病生活の中でやがては、乳癌の河野裕子が書き残しているように
身体が思うように動き、御飯がおいしく食べられるということ、これに優るものはない。健康でさえあれば、この世のことは何とかやって行ける。
といった心境になるのでしょうね。引用は、河野裕子・永田和宏『たとへば君 四十年の恋歌』(文藝春秋p179)より。

僕はこれで、6月27日の手術から約2か月、8月5日の退院から3週間になります。もうそろそろ通常の生活に復してもよさそうなものですが、まだ自宅でダラダラした生活(恥)。抗癌剤は、2クール目のTS1の服用2週間が過ぎ、今は休薬期間(2週間)です。来週9月2日(金)に病院に行き、血液検査後TS1の3クール目に入る予定です。
今日現在、いろいろ「不安」がありますが、大きくまとめると「食生活」「就労」「お金」「余命」の4つになるかなあ。もちろん4つは互いに連関してもいる。
極めて図式的になりますが、不安が臆病・弱気を引き寄せ、その反動としての攻撃性(周囲への八つ当たり)が牙を剥く。そのことに後悔しやがて己の卑小さに絶望する-癌患者の心理状態はそういった流れになるのかも。

食生活
入院先の病院の栄養管理科からもらった「術後の食事の進め方(めやす)」によると、「一日に食べたい量」は1500kcal。今は1日なんとかギリギリこれだけのカロリー摂取かなぁ。体重、退院時50キロを割ってたのですが、今は50キロ台です。退院してからやっと1キロ増加。
胃を全摘出したことが大きいのでしょうね。1回あたりの食事の量が限られている。急いで食べたり量を過ごすとダンピング症候群を起こす。そこへもってきての、抗癌剤による食欲不振の副作用。どうしてかわからないのですが、味覚も変わってきたみたい。以前はおいしいと思っていた食材・食品・調理法も口に合わなくなっている。周囲からは「ゼータク」と言われるかもしれませんが、自分、「おいしいものが食べたい!」って餓鬼道地獄におるんかも^^。
食生活がきちんとしないと体力がつかず社会復帰もままならない。食事でもう一つ心配は「外食」。今の状態じゃ、一人で外食、無理なんですね。だれか一緒に行って、1人分から分けてもらって食べる、なんてことになる。富山はどうかわかりませんが、ひょっとしたら大都会では、僕のような者向けのレストラン・食堂、あるかも。外食が無理となるといろいろと活動も制限されてきそう。
就労
僕は恵まれているほうなんでしょうね。勤務先の富山国際学院では「健康保険傷病手当支給」ってぇのの扱いになるみたい。僕は6月20日(入院日)から休業中で、7月分の給料が最初の適用月(学院は月末〆・翌月10日振込)。8月もそうなる予定。
入院中、朝日新聞のシリーズ「患者を生きる」は「がんと就労・読者編」(7月26日~8月3日・全8回)だった。「女性・36歳 同時性両側乳がん」の例を引用。
派遣元と派遣先の上司に手術前の抗がん剤治療で週1日休むが、仕事を続けたいと懇願しました。「休む分残業できますか」と言われ、退職せざるを得ませんでした。
治療が一段落して通院回数が減ったころ、ゼロからやり直そうと仕事を探しました。面接まで進んでも、がんの話をすると不採用になりました。病気のことを隠さなければ生きていけないと悟りました。

もう1例、「男性・50歳 カルノイド腫瘍」を引用。
上司は、毎日数時間残業が必要になる量の仕事を要求します。裁量労働制の給料は、残業が前提というのが上司の考えで、手術前のペースで働けないと出社されても困るそうです。(略)病欠期間が終われば、転職せざるを得ないと考えています。
とりわけ子育て世代・働き盛り・自営業にとっての突然の癌は極めて深刻。
「働き続けるためには、働く人も、企業も、社会も変わる必要があります」(桜井なおみキャンサー・ソリューションズ社長 乳癌)は正論なんでしょうが、実現はなかなか難しい。僕も含めた個々人がまずはがんばることでしょうね。
僕の仕事は日本語教師と学院長。スタッフの理解があるからといって、勤務先にいつまでも甘えるわけにはいかないでしょうね。就労については早めに結論を出さなければならない。
お金
僕の入院診療費は、6月(20日入院、27日手術)が11,9380円、7月が13,0657円、8月(5日退院)が4,7720円でした。6月・7月は「健康保険限度額適用認定」で安く(ってもワシにはけっこうな額ですが^^)なってるみたい。それによると、保険が適用される部分についての自己負担限度額があって、その計算式は
8,0100円+(医療費―26,7000円)×1%
です。
前述の朝日新聞「がんと就労・読者編」から「男性・60歳 慢性骨髄性白血病」の例を引用。
毎日治療薬のグリペックを服用しています。(略)ネックは薬代があまりに高額なこと。(略)今は会社の健康保険組合が負担をしてくれ、個人負担は1回2万円です。でも、昨年9月末に定年退職し、現在の継続勤務も来年10月には終了します。その後は、負担が一気に増える予定で、頭の痛い問題です。(略)負担の重さに耐えかねて、グリペックの服用をやめる患者さんもいるとか。
僕はもう無理ですが、癌が見つかる前に「がん保険」に入っておくのも有効でしょうね。入院時は上述の「健康保険限度額適用認定」でまだなんとかなりますが、通院とか抗癌剤などはがん保険があると助かるでしょうね。
再発・転移、そして余命
結局これが最大の不安でしょうね。体内に爆弾を抱えている状態。
「我や先、人や先」ではあるが、今の僕は割と「先」にいるのでしょうね^^。一方で、「自分以外はみんな死ぬ」とも思う。つまり自分が死んだ時は世界も終わる。自分は他人の死を見聞できるが自分の死は経験できない。
残された期間をどう生きるか。カッコ悪い生き方になるんでしょうね、自分は。
by tiaokumura | 2011-08-26 19:18 | 癌日記 | Comments(6)
Commented by アショーカ at 2011-08-27 01:08 x
涼しい日が続いています。
不安が臆病・弱気を引き寄せ・・・のくだりを読んでいて私のことかと思いました(苦笑) 健康な人間でもネガティブな時はどんどん気持ちが落ちていきますよ。今日は少しだけ上向きになれました。10年以上前に亡くなった知人をふと思い出したのがきっかけでした。過去も未来も今に集約されている。。。人は今だけを見つめていればいいのかもしれません。何言ってるのかよくわかりませんね~~失礼しました(ーー;)  
病気の辛さはなってみないと本当には分からないでしょうね。自分だったらどう対処できるだろう?と考えさせられます。相当カッコ悪いだろうとは確信してます(汗)
先生はヤバいくらいカッコいいです!!
Commented by 増山 at 2011-08-28 22:46 x
人の心理を図式化するの、あまり好きじゃないです。『コスモポリタン』だったか、アメリカ系の女性雑誌の日本語版にもよく、「男のハートの射止め方、ステップ1:〇〇する、ステップ2:〇〇する・・」とかあるけれど、可笑しいです。
あと聞いたことがあるのは、これもアメリカからきた考えだったかと思いますけど、「人は異文化に接したとき、まず『驚き、拒否する』、次に『絶賛する』、それから『やっぱり失望しながらも受け入れる』」だったでしょうか・・(ちょっと記憶違いかも)。
これからどういう心理状態になるのか、知識として知っておいてもいいかもしれませんが、奥村さんは奥村さんですし、あまりとらわれない方が。
Commented by tiaokumura at 2011-08-29 11:13
アショーカさま、「過去も未来も今に集約されている。。。人は今だけを見つめていればいいのかもしれません。」って、僕もなんとなくわかる気がします。
自分、「ヤバいくらいカッコいい」なんてことはまずありえません。正直、日本人男性の平均寿命くらいは無理でもあと10年くらいは生きるつもりでいましたもんね(激爆)。
Commented by tiaokumura at 2011-08-29 11:20
増山さま、確かに図式化ってわかりやすい反面、多くを捨象してるので危険でもあるでしょうね。異文化理解(受容)のステージもよく読んだり聞いたりしますね。
おっしゃるように、あれこれあまりとらわれないようにします。
Commented by アショーカ at 2011-08-29 12:39 x
病気療養中に、知的好奇心を失わず、インプット&アウトプットされているところが、実にカッコいいです。人としての矜持、胆力を感じます。愚痴も弱気もユーモアを加えてさらっと流す、、、粋です^^  
Commented by tiaokumura at 2011-09-04 10:55
アショーカさま、ご期待に沿えるように生きられればいいですが、どうなりますことやら。そのうちに干からびてユーモアがなくなる状態も出てくるんでしょうね、きっと。
これからもよろしくお願いいたします。


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