小西弘通先生「富山”観世塾”」10月

先月は私用で受講できなかった小西弘通先生「富山”観世塾”」、本日受講。8月は28日にあり『経正』『三井寺』『俊寛』でした。あれからわずか2か月で富山の気温、20度くらい下がっているでしょうね。午前中床屋さん・博文堂さん支払い&注文、12時前に家を出て、一龍で昼食後、12:50頃、富山能楽堂に入る。
今月は『紅葉狩』『井筒』『遊行柳』の3曲。

『紅葉狩』、小西師がまとまりに区切って範を示し、それを受講生がその都度繰り返す。今年度は1曲目がこの方式になっています。僕のようなズブの素人にはありがたい試みです。
45年ほど前の大学生時代、クラスメートの宮崎健二君・山下富雄君らが銕仙会に入っていた。寿夫の時代なんでしょうね。昨年だったか宮崎君と金沢で夕食をともにした折、『紅葉狩』の初めのほうを披露していただいた。若いときに覚えたことってなかなか忘れないものなんでしょうね、美声でした。
『紅葉狩』は平維茂がワキ。彼の信濃守時代の山賊退治の武勇伝を下敷きにしたんでしょうね、観世小次郎信光(世阿弥の甥・音阿弥の子。世阿弥が亡くなった頃に生まれている)が作る。鹿狩に来た維茂だが、さる高貴な女性たちの紅葉狩に遭遇し、邪魔をせぬようにとそっと通り過ぎようとする。ところが、美女に「ちょっと寄って宴をともになさいませんか」と誘われる(「一河の流れを汲む酒をいかでか見捨て給ふべき」)。ボクなんかすぐお誘いに乗っっちゃうでしょうね(恥)。いかな武将といえども維茂とて男、「さすが岩木にあらざれば心弱くも立ち帰る」。文選の「人、木石に非ざれば」を踏まえている詞章。「心弱く」ってとこ、ボクなんかと違って維茂サンは罪の意識があったんでしょうね(激爆)。それとなく女性を観察すると、この世の人とも思えない「紅深き顔ばせ」で、維茂はただ「胸うち騒ぐばかりなり」。彼、数ある仏教の戒めの中でも上位にランクされる飲酒を重ね、美女の舞いに見とれる。やがて維茂は「シテ:月待つ程の仮寝(うたたね)に」。シテは「夢ばし覚まし給ふなよ」を繰り返す。伏線になるのでしょうね。『紅葉狩』は大成版で全九丁なのですが、ここまでで8丁オモテ2行です。こういう構成、観世信光の作劇術のなせる業でしょうね。中入りが入り(維茂、夢の告を得る)、ふっと目覚めた維茂の許に出現する鬼。「今まで存りつる女」は実は観客の期待通り「化生」だったんですね。「その丈一丈の鬼神の角はかぼく眼は日月面を向くべき様ぞなき」ってぇんですから、すさまじい。でもさすが世に聞えた武将維茂、「少しも騒がずして」、夢のお告げで得た剣でみっごと鬼退治。
発表当時、民衆がどの程度観劇できたか知らないが、信光新作の立ち回りに興奮の坩堝状態だったでしょうね。そして、後世の浄瑠璃・歌舞伎・文楽・映画などにも『紅葉狩』の趣向は大なり小なり影響を与えたことでしょうね。

2曲目、『井筒』。『紅葉狩』同様、お能の人気TOP20に入る曲でしょうね。世阿弥元清伊勢物語から自由自在に換骨奪胎した名曲。
この曲、恋愛至上と思わせつつ「亡婦魄霊」(十丁オ)ともあって、ボクのようなヒネクレ者はそっちのほうに注目してしまう(激爆)。そういうの、「夢幻能」への冒涜でしょうか。でも「夢も破れて覚めにけり/夢は破れ明けにけり」と「は/も」を使って対句でエンディングにしている世阿弥の「恋愛観」、ご本人に伺ってみたい気もします。いや、ここでの「夢」は恋愛観から来るのではなく、ワキ僧の能中での役割のエンディングを示しているだけなんでしょうね、きっと。

3曲目、『遊行柳』。謡本が用意できず、いつもあれこれ教えていただいている富崎茂樹さんの大成版をお借りしました。
この曲、世阿弥の『西行桜』に「触発され、あるいは挑戦して創られた観世信光晩年の作品」(増田正造『能百十番』平凡社、p.107中)。この曲も『紅葉狩』同様、全体の4分の3を過ぎたあたりで一気に大団円へ向かう。よく知らないのだが、『紅葉狩』との差は信光の加齢によるものだろう。仏教讃歌みたいな終わり方は、応仁の乱の時代の「厭離穢土」みたいな気分を反映しているのだろうか。勝手な想像を許してもらえば、同じ信光作品でも『紅葉狩』のような大衆の喝采は浴びなかったことでしょうね。でも、『西行桜』『遊行柳』は「両曲とも、能独自の表現の世界の、一つの極を示すものであろう」(増田前掲書、p.107中)。
西行の「道のべに清水流るる」は曲中に「・・・しばしとてこそ立ちとまり」で引かれている。詞章が「・・・しばしとてこそ/立ちとまり、・・・」と続くからなのでしょうか。どうなんでしょうね。
謡とは全く関係ないのですが、この間の成都や西安のニュースで知ったのですが、あれって中国語で「示威游行」ですって。知りませんでした。「へ~」ですよね。

川田有紀子先生に11月27日の華川会の忘年会に誘われました。
当ブログで確かめてみたら、昨年は12月3日に太平橋での同会に出席しています。今のところ当夜は空いているので、喜んで参加させていただこうと思っています。今年もベニズワイガニが食べられるのかも^^。
[PR]
by tiaokumura | 2010-10-30 20:40 | 謡を習う | Comments(0)


<< 蓑島良二『とやま キトキト魚名... 新入生歓迎会@岩瀬スポーツ公園 >>