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若松孝二監督『キャタピラー』

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(8月27日夜・記)
若松孝二(1936-)監督『キャタピラー』の制作を聞いた時、江戸川乱歩(1894-1965)「芋虫」と鶴彬(1909-38。石川県河北郡出身)「手と足をもいだ丸太にしてかへし」を連想した。同映画、8月24日(火)夜にフォルツァ総曲輪で観た。
フォルツァ総曲輪は、元大手の映画館だったところをそこが撤退して何年か後から、ボランティア有志スタッフにより運営されている。僕にとっては岩波ホール(東京)・シネモンド(金沢)みたいな貴重な上映館。年に1~3回は利用させていただいています。シニアなんで(照)、1回1000円ってぇのもありがたい。お礼にいつかボランティアしてみようと思っています。23日に肺炎で亡くなられた川本喜八郎さん(1925-2010)の『死者の書』(2005年。原作・折口信夫)はフォルツァ総曲輪で観たか。いや、当時まだあった中央通りの松竹だったかもしれない(ノルシュテインは確か松竹で観た)。

僕の20代の頃から現在に到るまでご活躍中といえば、吉本隆明・鶴見俊輔・横尾忠則・三宅一生らが挙げられるが若松孝二もそのお一人。Wikipediaの若松のフィルモグラフィーを眺めても「これを観た!」ってのがないのですが、高名は当時から鳴り響いていた。
僕は20代(もう遥かな昔^^)、けっこう映画にハマってました。大学進学で上京したボクにとって映画は「都会」であり「逃避」だったんでしょうね。それまでの映画体験といえば、小中学生時代は東映時代劇や伝記映画(川上哲治や稲尾や若乃花ら、力道山も?。本人が出演することが多かった。ドキュメンタリー映画みたいな要素もあったんでしょうね)や校庭での上映会を見て育ち、高校では吉永小百合を見たり、本木英子先生のお薦めだったんでしょうね、『尼僧ヨアンナ』を見たりした。上京した当時から10年ほどのボク的映画受容史(爆)を語れば、ヒチコックやフォードやウエルズや小津や溝口はそろそろ「過去の人」で、ゴダールやフェリーニやベルイマンやアントニオーニが次々と作品を発表し(ベルイマンは寡作だったけど)、アメリカンニューシネマが登場し、日本映画では、ATGがあって、ヤクザ映画全盛で後に『仁義なき戦い』へとつながり、五社協定が有名無実化してかつてない俳優の組み合わせの映画が製作され、黒沢天皇が君臨し、寅さんシリーズがヒットし(ただし僕はほとんど見ていない)、角川などの大作映画が活況を呈し・・・といった状況だったろうか。時系列では前後ズレもあるだろうが、ボク的^^にはそんな感じでした。
若松は当時も今もブレていない稀有な映画監督。
シゲ子(寺島しのぶ。この映画で「ベルリン国際映画祭・最優秀女優賞(銀熊賞)」を受賞)の夫・久蔵(大西信満)は戦地満州から両手両足を失った「軍神」として帰還する。食欲・性欲以外には何もないかのような存在の久蔵。映画はシゲ子と久蔵の関係性を軸に展開する。まだ観てない方もおありでしょうから精しくは書きませんが、最後のシーンは「敗戦」、BC級戦犯の処刑。主題歌は元ちとせ「死んだ女の子」(作詞 ナジム・ヒクメット、作曲 外山雄三、編曲 坂本龍一)。
この映画、シゲ子が久蔵の口にもらった生たまごを無理矢理押し込むシーン、満州で己が為した罪悪(レイプなど)が久蔵に蘇り慄くシーン、シゲ子が騎乗位で求めるが久蔵がEDのままなシーン、天皇の終戦の詔勅の平易な日本語訳が画面上部にテロップで流れるところ、久蔵が必死の形相で池まで這っていくシーンなどが印象に残っています。

若松は8月1日だったか、来富。僕も聞きに行きたかったのだけど、台北旅行で行けなかった。来富時のインタビューが8月20日付北日本新聞、8月27日付朝日新聞に載っています。
「戦争が起これば、何の罪もない人を傷付け、また自分も傷付けられる。日々の生活だってめちゃくちゃになる。正義の戦争など存在しないことを、スクリーンから感じ取ってほしい」(北日本新聞)
「特攻隊や戦艦大和をかっこうよく撮った作品もあるが、戦争とは、そんなものではない。夫婦の姿を通して、『戦争は悲劇でしかない』ということを描きたかった」(朝日新聞)
映画のパンフレット(952円+税)、ずいぶん資料価値があるスグレモノです。若松孝二インタビュー・蜷川幸雄や田原総一郎らの寄稿・完成台本・制作日誌などが入っており、更には、このパンフのために作ったのか半藤一利の著書から引用してるのかわかりませんが、1926年~1952年の年表・用語解説はすばらしい。

フォルツァ総曲輪での上映は9月3日まで。まだご覧になっていない方(ただしR-15指定)はぜひご覧ください。
『キャタピラー』の公式サイトはこちらフォルツァ総曲輪の公式サイトはこちら
by tiaokumura | 2010-08-24 18:52 | 映画 | Comments(6)
Commented by 宮明 at 2010-08-25 09:43 x
残暑お見舞いの葉書、ありがとうございました。
最近発売の新潮社「満洲の情報基地ハルビン学院」芳地隆之著は良書です。芳地氏は十年前に新潮選書「ハルビン学院と満洲国」も書いていて、今回の書も歴史的背景から戦中、戦後の貴重な体験談を20名くらいのハルビン学院生からの聞き書きや書簡を参考に書き上げたものです。歌手加藤登紀子の父親のエピソードも載っています。
この企画はハルビン学院連絡所でもまったく知らなかったのですが、発行直前に写真資料を載せたいとの新潮社からの依頼で判りました。沢山使用されている写真はすべて恵雅堂出版提供のものです。参考までにお知らせしました。
この本の広告は何新聞に載っていたのでしょうか。
Commented by tiaokumura at 2010-08-28 19:12
宮明さま、久々のコメントありがとうございます。
芳地隆之さんのご本、宮明さんが「良書」とおっしゃるのですから、間違いありません、本屋さんに注文しておきました。恵雅堂出版さんご提供の写真も楽しみです。
新聞の広告はたぶん朝日新聞だったかと思います。
8月ももう終わりですがまだまだ残暑続きです。宮明さまにおかれましてはお忙しいでしょうが、ご自愛を。
Commented by 宮明 at 2010-08-28 22:18 x
お知らせありがとうございます。読売新聞の広告は気をつけて見ていましたが、朝日新聞でしたか。
本を処分しているところなのに、また1冊増えてしまいますね。申し訳ありません。哲ちゃんや吉岡さんには必読書とおもいます。
暑さ厳しきおりお身体に気をつけてお過ごしください。
Commented by 哲ちゃん at 2010-08-30 19:55 x
奥村君,宮明さん,ご無沙汰しております。残暑が続いていますが,お元気のご様子にて何よりです。
ところで,芳地隆之さんの『満洲の情報基地ハルビン学院』は,今日,購入してきました。読み始めるのはちょっと先になりますが,面白そうなので楽しみです。芳地さんの前著もじつに面白かった。
Commented by tiaokumura at 2010-09-01 19:19
宮明さま、コメントありがとうございます。
芳地さんの本、新聞広告で見て、新潮社だからトンデモ本じゃないだろうとは思ったのですが、宮明さんの「良書」で安心して読めます。ありがとうございます。
本を「捨てる」という愚かな行為に走っていますが、「良書」は引き続き読みたいと思っておりますので、お気になさらないでください。
9月になりましたが、まだ暑い日。首都圏もきっとそうでしょうね。御身ご大切に!
今後ともよろしくお願い申し上げます。
Commented by tiaokumura at 2010-09-01 19:23
哲ちゃん、久々のコメントありがとう。
9月になったけど、今日の富山、35℃くらいあったんじゃないだろうかなぁ。そっちも暑いんでしょうね。お互い無理せず「夏」を乗り切りましょう。
そうですか、芳地さんの前著も読んだんですか。僕は芳地さんのお名前、今回の新聞広告で初めて知りました。宮明さんがおっしゃるように「良書」なんでしょうね。届くのが楽しみです。いずれまた当ブログの記事にできたらと思っています。
風の盆が始まりました。9月3日午後8時過ぎ、八尾を訪れます。とても楽しみ。


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