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渡辺睦子 解説・増田正造『新装版 まんが 能百番』(平凡社)

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渡辺睦子 解説・増田正造
新装版 まんが 能百番
2009年11月10日 初版第1刷
平凡社
952円+税

との出会いは不思議なもんです。昨日の記事で取り上げた、川田有紀子先生(観世流華川会)からいただいた『観世流 能のすすめ』。著者の増田正造という方は僕は初めてなのですが、今日、先週博文堂さんから届いて忙しさにかまけてそのままにしていた本を整理してたら、アップした写真の本に「増田正造」名を発見しました。増田正造は、ボクが知らなかっただけで(恥)ずいぶん高名な方のようです。著書も多数あり、横道万里雄や戸井田道三や馬場あき子との共著もある(Wikipediaより)。コロナ・ブックス(値段がそれほど高くないので何冊か持っています)に増田正造『能百十番』があるので今月博文堂さんに注文しようと思っています。
との出会いは偶然だと第一義的には思う。川田先生からいただいた本と最近購入した本とに同じ方の名前があった-偶然、でしょうね。でも、「風が吹けば桶屋が儲かる」「北京で蝶が羽ばたくと、ニューヨークで嵐が起こる」というふうに、全てに因果関係があるわけだから、ここは、僕の能への希求精神が2つの本を僕に引き寄せたと言えばいいのかもしれませんね。「偶然は全て必然的に起こる」あるいは「奇跡は奇跡的には起こらない」(金大中でしたっけ?)。ま、そんな理屈っぽいことはどうでもいいことですが(激爆)。

本書、能百番(50音順配列)について、登場人物紹介略画・あらすじ・独特の語り口での5~6行文(例えば『卒塔婆小町』の場合は「絶世の美女といわれた小野小町も、/寄る年波には勝てんかった。/今じゃ、百歳のしわくちゃばあさんじゃ。/おまけに、どこをどうさまよったのやら、/ボロボロのみすぼらしい乞食になっておった。」)、そしてこれがこの本の最もすごいところなのですが、能百番全てを見開き2ページの「12コマまんが」にしている!
「新装版」の元本は昭和61年刊のようです。本書の巻頭に当時の日付の増田正造「推薦のことば」があり、巻末に2009年9月付の渡辺睦子「二三年後のあとがき」があります。
著者の渡辺は武庫川女子大時代のクラブ活動が能楽部で観世流(「著者略歴」による)。その当時、能会のパンフレットで『草子洗小町』について書かなければならなくなった。「・・・文章を書くのを苦手とする私は困りましたが・・・ダメもとでまんがを描いて持っていったら・・・好評で受け入れていただき・・・」(「二三年後のあとがき」)、それから百番まで到達した。「絵に関してもお能に関しても素人の私」(同)とのことですが、このようなアイディアを思いつかれたこと・それが百番もの大作になったことは尊敬に値します。また、このような形で後世に能が伝わっていくこともあるという、能の持つ魅力の広さも、本書を手にして感じます。

初めて能を観る人に 心強くて楽しい入門書」(帯より)。折りに触れ、本書で楽しく勉強できそうです。生きる楽しみが増えました。
by tiaokumura | 2010-01-21 20:07 | 謡を習う | Comments(2)
Commented by kaguragawa at 2010-01-22 00:07
この道には暗い私ですが増田正造の名前には心当たりがありめったに見ない書庫をごそごそとあさってみましたら平凡社カラ―新書『能を楽しむ』(増田正造・戸井田道三/1976)というの本がありました。この本の末尾に「現行曲のすべて」というコーナーがあって各曲が数行のコメントを付されて並んでいます。日本の私の知りたい文化が凝縮されていてあらためて驚きました。かつて「おくのほそ道」を精読?した際、芭蕉が旅に追ったのは西行らの歌の世界ではなく、“殺生石”“遊行柳”などの能の世界ではないのかという思いをいだきました。芭蕉が氷見を訪れようとしたのも万葉集への追慕というよりは田子の白藤に能“藤”の世界を夢想していたのだと確信しています。
Commented by tiaokumura at 2010-01-22 20:01
kaguragawaさま、『能を楽しむ』はずいぶん名著のようですね。今月注文に入れようと思っています。絶版になってなきゃいいのですが。
芭蕉が歌枕ではなく能っての、言われてみると、なるほど~と思われます。いつかその視点で『おくの細道』、読み返してみます。
僕よりkaguragawaさんのほうが謡、似合ってると思います。「観世塾」「華川会」、いつかお訪ねください。


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