カテゴリ:謡を習う( 39 )

燭光能@瑞龍寺

f0030155_13324919.jpg(5月28日午後・記)
5月20日は加賀藩2代藩主前田利長の祥月命日。利長33回忌法要に3代藩主利常が能を奉納。それから幾星霜、途絶えていた燭光能を保存会が再現し、昭和59(1984)年の利長忌から毎年奉納。今年はその日が土曜日なので、自分、観能のチャンス。5月20日(土)にあいの風鉄道(JRだったのが、北陸新幹線開業に伴い、こちらに移行。初代社長は植出耕一君)に乗って、富山から高岡へ。高岡駅瑞龍寺口を出て徒歩15分くらいでしょうか。国宝・瑞龍寺
法要の後、演能。毎年そうなのか、演目を変えるのか知りませんが「(とおる)」。世阿弥作。宗左近「あれほど月の光のおそろしい妖異を、ありありと感じられるように描き出した文章は、日本文学の歴史の中でも、おそらく他にありはしないのである」(増田正造『能百十番』p83)。ダイジェスト上演とでも言うのでしょうか、全曲じゃなかったような。アップした写真は、後シテ(広島克栄)が舞うところ。手前に地謡。蠟燭の灯にうまく映っている。ただし、PCによっては見づらいかも。国宝の法堂で上演。左に仏壇。瑞龍寺は、法堂の他に仏殿・山門が国宝。遠足で来たかもしれませんが記憶にない。きっと今回が僕の瑞龍寺初体験。5月20日が土・日曜になるのはとうぶん先のことでしょうから、今回の燭光能、最初で最後かも。薪能(電気じゃなくって本当の篝火)、京都か鎌倉とかで観たい。
加賀藩・高岡なんで観世じゃなくって宝生でしょうね。

参道に面したお店で昼食。
駅に戻る道に理髪店。激安だったので^^利用。さっぱりしました。

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by tiaokumura | 2017-05-20 13:32 | 謡を習う | Comments(0)

御松囃子

f0030155_135441100.jpg(1月3日午前・記)
僕、初め、「御松+囃子」と思ってましたが^^「御+松囃子」です。おまつばやし。「謡初」(うたいぞめ)でしょうね、あるいは謡初め。加賀藩では、加賀藩五代藩主・前田綱紀(まえだ・つなのり)の時代に始まった。250年ほど続いたのでしょうが、幕末の動乱期でそれどころじゃなくなったんでしょうね、1863年に途絶えた。それから150年の時を経て、地元有志による復活の動きがあり、2015年に復活第1回。今年2017年第3回目、観て来ました。初体験。
金沢は高速バスが安くて便利。1月2日(月)10時富山駅発に乗車。金沢能楽美術館、12時前に入ったら、すでにけっこうな行列が3階から1階の階段に並ぶ。会場は3階の研修室。前の畳に陣取ることもできたのですが、足が心配で椅子席最後列中央に座る。250人くらいでしょうか、ほぼ満員。アップした写真(「猩々」。シテは高橋右任)にあるように、能舞台ではなくステージが設けられそこで上演。奉行役の「謡いませ~」で始まる。能に「縁起物」ってジャンル、あるかどうか知りませんが、「四海波」「高砂」「猩々」などおめでたい曲も。「東北」は前田家家紋の梅から。独吟「松高き」の渡邊師(名前の1字目が出ないので名字だけに)は、ラ・フォル・ジュルネ金沢で毎回クラシックとコラボしてるはず。「空から謡が降るまち」とも呼ばれる金沢、金沢能楽美術館・小謡講座受講者による「兼六園」も。こういう曲、あるんですね。隣席の男性が謡本のコピーを広げてたので、盗み見しました^^。最後の挨拶は渡邊で2時ころ終演。さすが金沢、観客は上品で教養ある紳士淑女。ワシのような男はアウエー感も(激爆)。若い人や外国人もちらほら。
曲目は以下の通り。すべて「加賀宝生」でしょうね、きっと。
独吟「四海波」  舞囃子「高砂」  独吟「松高き」  舞囃子「東北」  仕舞「西王母」  仕舞「岩船」  小謡「兼六園」  舞囃子「猩々」
御松囃子 百万石こそ めでたけれ  隆信
謡撮る 外つ国人や 初景色  隆信
耳も眼も 福いつぱいの 謡初   隆信

帰宅して増田正造『能百十番』(平凡社)を見たら、以下の記述あり。
徳川幕府の正月三日の謡初の式には、観世太夫が平伏して「四海波」の祝言を謡ったあと、「老松・東北・高砂」の三曲が、舞囃子の形で演奏されるしきたりだった。(同書p82)

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by tiaokumura | 2017-01-02 13:54 | 謡を習う | Comments(0)

観世寿夫 能楽講義02『朝長』後半(「花もよ」第19号)

f0030155_15113420.jpg53歳で早世しなかったら、文化勲章だったでしょうね、観世寿夫(かんぜ・ひさお1925-78)。彼の、今から40年以上前、1973年末の銕仙会舞台での観世寿夫師(48歳頃)と生徒の大谷(おおや)いづみとの貴重な音源が残っていて、それを「花もよ」編集室がCD化。僕はそのことを朝日新聞記事で読み、注文した。その「能楽講義01」は当ブログこちらの記事で紹介しています。今回アップした写真は、それに続く「花もよ」第19号表紙とCDです。
前回のCDは解釈や解説が多かった感じですが、今回は謡が多い感じ。トラック番号1(以下「Tr1」と表記)では、『朝長(ともなが)』後半は「悲劇的な語りから抽象的な広がった世界へ持って行く」と説明。手元に『朝長』謡本がないので残念ですが、CDを聴きながらメモ化しました。本記事、それに拠る。富山国際学院の移転後は通勤時間が往復1時間くらいで、このCDは63分27秒なので、1往復で1回聴けます。Tr2「悲しきかなや」Tr3「かくて夕陽」Tr4「御僧に申し候」Tr5「さても幽霊朝長の」と謡が続く。時々往来の車の音が入っているのは、かえって時空離れの幽玄を演出かも(激爆)。大谷への指導もわかりやすい。世阿弥の「一調・二機・三声」でしょうね。Tr4では「調子を低く、遠くへ呼びかける」ように謡えと。Tr7では懺法。「懺法(せんぼう」ってのは仏事でしょうね、朝長の霊が出てくる。ここでの太鼓・大鼓・小鼓、とりわけ太鼓の効果。出端(では)が難しいそうです、寿夫曰く。Tr7「あらありがたの懺法やな」Tr8大谷「あらありがたの懺法やな」の練習。「切るか続けるか、2通りの謡い方」。Tr9「不思議やな」、大谷「げにげに」。Tr10「あれはとも」。詞章に「あしたに紅顔・・・夕べには白骨となって・・・朽ちぬ」が出てきますが、蓮如「御文章」を連想する。これ、オリジナルはどこなんでしょうね。「白骨と」の「はっこ『つ』と」の促音、能ってマスク劇なんで、促音などの特殊伯、独特の発声なんでしょうね。長音・二重母音もそうかも。Tr11原始強吟、大谷「わらべ歌みたい」。Tr13「さる程に」、ここで悪源太・頼朝・義朝が出てくる。それぞれの登場が各フレーズになっていて、という寿夫の説明もわかりやすい。同様にTr14の「3字分、2字分、詰める」って教え方もわかりやすいでしょうね。Tr16では宝生「9拍」と観世の違いに触れる。Tr18「旗は白雲」。Tr19、強吟。他の個所でもそうですが「おもしろい」「おもしろくない」ってのも寿夫の謡の基準になっている。Tr20大谷、Tr21クセ。最後のTr22は雑談風ですが、興味深い発言多々。『朝長』『実盛』は「修羅物の王様」。『野宮』と『井筒』の比較。このころ寿夫はビクターレコ-ドで『野宮』の独吟を録音してた。体言止めについて、『野宮』と『融』の場合。『野宮』の作者の推理(現在は禅竹説が有力)。『朝長』は世阿弥が禅竹に贈った『三十五番目録』に載っているので世阿弥のレパートリーであったことは間違いないが、作者であったかどうかは不詳。

「花もよ」第19号に八世観世銕之丞と大谷いづみの対談(p22)。銕之丞「寿夫の亡くなった年をはるかに超えましたけれど、全然だめだなって感じはすごくありますね。」。僕は、寿夫は革命児、栄夫(ひでお1927-2007)は反逆児って印象である。銕之丞は静夫(しずお1931-2000)が襲名した。
ネットでは「松岡正剛の千夜千冊」の「1306夜 観世寿夫『世阿弥を読む』」がすごい。こちらです。
「朝長」で検索してヒットした「謡蹟めぐり 朝長 ともなが」、僕のようなド素人にはありがたい。こちらです。
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by tiaokumura | 2015-05-31 15:11 | 謡を習う | Comments(0)

観世寿夫 能楽講義(『花もよ』第18号)

f0030155_763219.jpgすっごいものが残っていたものである。2015年3月3日の朝日新聞「観世寿夫の稽古 CDに」(増田愛子記者)を読んで驚いた。
僕の1回目の大学生時代は東京の、地下鉄で言うと丸ノ内線・茗荷谷にあったA大学だった。この大学は後に廃校、先年訪れたら跡地は公園になっていた。僕はA大学文学部文学科国語学国文学専攻の学生。小西甚一教授の関係もあったんでしょうか、学内に能狂言サークルがあり、同期生の宮崎健二君や也山下富雄君らは銕仙会にも属していたように思う。
朝日新聞記事より引用。
若くして「天才」と言われ、現代劇との交流にも意欲的だった、観世流シテ方の能楽師、観世寿夫(1925~78)の稽古の様子を収めた未発表の録音が、雑誌の付録CDとして発売された。
記事中のケータイに問い合わせ、後日、「花もよ」第18号を入手した。アップした写真、同誌の表紙、左下にあるのが付録CD。同誌には「『能楽講義』について」(p14-17)で観世銕之丞と大谷いづみの対談あり。大谷がCD所収の稽古の弟子で、彼女は当時、東京芸大楽理科の学生。稽古は『朝長』。同誌には1970年秋の観世寿夫(後シテ)・野村四郎(ツレ)『通小町』の写真も(p16)。
今、通勤車中でこのCDを聞いています(約70分)。アシライやらヤヲやら上オサエなど、僕のようなド素人にはよくわからない専門用語も頻出するが、このCDのすごさはよくわかる。教師の端くれとして「いかに教えるか」という点でも貴重な示唆が得られる音源である。大谷は「私は不肖の弟子で中途半端で結婚して出産してお休みしたのですが、半年したら復活しますとお約束したら、ちょうどその頃ご病気になられて、結局中断したままになってしまいました」(p17)とのことである。
『朝長』は初めて聞く曲。CD中の寿夫によると世阿弥作かどうか不詳のようです。CDは、「朝長」について、ワキ道行、前シテ謡注意、語りについての注意、などで構成。今回は前半部分で、後半部分は4月末発売の第19号に再び付録として発売予定。
このCD、3000~5000円でも売れそうな気がする。それが本誌ともでわずか782円! こういう雑誌、あったんですねぇ、知らなかった。

2015年3月15日・追記
松岡正剛の千夜一夜」に、1976年8月の富山県利賀村での観世寿夫『経正』体験が書かれています。こちら
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by tiaokumura | 2015-03-12 07:06 | 謡を習う | Comments(2)

富山薪能

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(8月1日朝・記)
7月31日(水)午後4時、富山国際学院での仕事を終え、車で富山能楽堂に向かう。この日、川田有紀子先生観世流華川会・主宰)から先日ご案内をいただいた「富山薪能」。4:45からの第2部に十分間に合うと思って学院を出たが、予想外に道路が混んでいる。月末だからでしょうか。能楽堂のある場所の駐車場でも意外なことに、ほぼ満車。能楽堂に入るのは4:45過ぎになった。座席は、これまた3回目の「じぇ・じぇ・じぇ」^^だが、ほぼ満席。能楽堂がここまでの入りってのは、そんなにしょっちゅう訪れているのではないが、初めての経験。出番を控えた川田先生にちらっと会えた。ラッキー。
時間がずれこんでたんでしょうね、第2部の初めから観られた。番組
仕舞(宝生流) 藤 春日権現
仕舞(観世流) 小鍛冶 三井寺
舞囃子(宝生流) 放下僧
舞囃子(観世流) 雲林院
火入れの儀
狂言 宗八
能 船弁慶
附祝言

富山は、前田藩の関係でしょうか、宝生が盛ん。観世は劣勢かも。薪能ではプログラムにあるように、宝生・観世が交互に演能。舞囃子は「仕舞+楽器演奏」となるでしょうか。
雲林院」は小西弘通師。大鼓・飯嶋六之佐、小鼓・住駒幸英、太鼓・麦谷暁夫、笛・片岡憲太郎の皆さん。地謡は松下覚、山本博通、波多野晋、數川悟の皆さん。
船弁慶」を観るのはこれで何回目になるか。名曲中の名曲でしょうね。今回は間狂言も入って完全上演。シテ・宝生和英師。宝生和英(ほうしょう・かずふさ1986-)は宝生流第二十世宗家。まだ20代で将来能楽界を背負って立つ方なんでしょうね。昨年の薪能では「井筒」の後見だった。ワキ(弁慶)は殿田謙吉さん。恰幅のいい方で声もよく響き弁慶にうってつけの方だった。
船弁慶」観世小次郎信光・作。静御前(前シテ)は弁慶から義経の西下りに同行できない旨を伝えられる。弁慶のその言を疑い、義経の本意を確かめるべく義経の元に伺う静。そこで義経自らの決断だったと知り、別れに舞を舞う静。後半、弁慶は躊躇する義経を促し船出する。やがて海に異常が。平家の公達が洋上に現れ、義経一行に挑む。とりわけ平知盛(後シテ)の怨念はすさまじく・・・。
午後8時ころ終演。
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by tiaokumura | 2013-07-31 16:47 | 謡を習う | Comments(0)

観世宗家展@相国寺承天閣美術館

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(5月14日朝・記)
今回の京都行きの一番の目的が「観世宗家展」。同展、東京で開催してた時は時間&お金^^の都合がつかなかった。それが京都に巡回と知り、今回の京都行きプランを立てた。
5月11日(土)京都市美術館で受付嬢にいちばん近い駅を聞く。「東山」とのことで、岡崎公園を出て駅まで歩く。行き交う観光客、多数。で、けっこうあるんですね駅まで、疲れた身には。流しのタクシーを拾って「しょうこくじまで」と告げる。車中、運転手氏「そうなんです、しょうこくじなんですよね、そうこくじじゃなくって」と。「相国寺」は「しょうこくじ」と発音する。ちなみに本展の「承天閣」は「じょうてんかく」です。
相国寺は京都五山の第2位。鎌倉五山じゃ「円覚寺」に匹敵するんでしょうか。

観阿弥生誕六八〇年 世阿弥生誕六五〇年記念
~室町の花~
「観世宗家展」

~5月26日(日)
相国寺承天閣美術館
監修 観世清和(二十六世観世宗家) 松岡心平(東京大学教授)
本展覧会では、世阿弥自筆の『風姿花伝』や八代将軍・足利義政拝領の「萌葱地菱蜻蛉単法被」をはじめ、観世宗家に伝来する貴重な能装束・能面・能楽資料を一堂に公開いたします。観世家に所縁のある相国寺にて、時代を超え、受け継がれてきた至宝の数々を御覧頂く、またとないイベントです。(観世流・公式サイトより)

本展は、第一展示室「装束」「文献」、第二展示室「装束」「文献」「面」「承天閣美術館所蔵作品」で構成。お能の扇は「集中の依代」という説明、なるほど、です。文献には『風姿花伝』『申楽談義』や世阿弥自筆能本など。美術館所蔵作品には義満・雪舟・一休ら。そして相国寺は若冲ゆかりの寺でもあり、今回は鹿苑寺の2点が展示(常設展示なのかもしれません)。
会場で入手したリーフレットによると、CD「観世流 謡曲百番集」という企画がある。一~十一巻は発売済み。シテは全て観世清和(かんぜ・きよかず1959-)で『鶴亀』『経正』『羽衣』『紅葉狩』など。「初心十五曲を待望の新録音でCD化!」(同リーフレットより)。
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by tiaokumura | 2013-05-11 11:53 | 謡を習う | Comments(0)

金沢能楽美術館

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(5月6日午前・記)
5月4日(土・みどりの日)、ラ・フォル・ジュルネの合間を縫って金沢能楽美術館へ。金沢駅からバスに乗り広坂で下車、「21世紀美術館」が目立つのですがそれに隣接している感じの立地。本当は能楽美術館のほうが先に出来てるんでしょうけどね^^。

金沢前田家の関係で宝生が盛んな土地柄。富山県高岡も、前田家の分家になるからでしょうね、宝生が盛んです。
金沢の能楽は、加賀藩前田家が武家の式楽として保護、育成を図り、庶民にも広く奨励したことから、「加賀宝生」として独自の発展を遂げ、このまちは「空から謡が降ってくる」とまでいわれるようになりました。(金沢能楽美術館「館内のご案内」より)
・・・前田利家は茶道に通じ、和歌・書道に巧みであり、はじめ幸若舞を好み・・・その後、太閤秀吉の影響を受けて、ことに能楽の愛好者となった・・・利家は余暇のあるときには三日に一度の稽古を熱心に行ったというほどの能好きであった。・・・
文禄二年(1593)九月ころ、京都の利家邸に秀吉が訪問したときには、利家は「松風」「山姥」を、秀吉は「定家」「田村」を、徳川家康は「通小町」をそれぞれ演能している。(「藩主の能楽(加賀藩の能楽)」より)
この日は「花の風姿」展が開催中。

アップした写真、たれあろう、私です^^。ここでは能面を着用することができるんですね。ボランティアの方が着付けも無料でやってくださる。能面は自分で選べ、僕は般若にしました。本当は翁なんだろうけど(激爆)。衣裳は般若に合いませんが、そこはしょうがない。

この日の夕食は、この日乗車のタクシー運転手さんのお薦めの黒百合@金沢駅百番街で。おでんのお店(他にもおいしいものがありますが)。玉子・ジャガイモ・こんにゃく・海老天・鰯つみれ・帆立貝。注文欲張りすぎて、食べきれなかった(恥)。
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by tiaokumura | 2013-05-04 15:46 | 謡を習う | Comments(2)

『芸術新潮2012年12月号 特集 はじめて観る能』(新潮社)

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芸術新潮 2012年12月号』
「特集 観阿弥生誕680年 世阿弥生誕650年記念 はじめて観る能
2012年11月24日発売
新潮社
定価1400円

「はじめて観る能」ってことで初心者向けであることは間違いないのですが、だからと云ってイージーな作りではなく、こういうことを知識として持って能楽鑑賞をするときっと深い感動が味わえるだろうなという丁寧な作りの本です。これまでに雑誌・ムックで「能入門」って何回もあったのでしょうが、僕には初めてです。
対談「観阿弥・世阿弥 天才の系譜」が梅原猛(うめはら・たけし1925-)と観世清和(かんぜ・きよかず1959-)。この企画でこれ以上ないっていう組み合わせの二人でしょうね。梅原の発言から。
私が・・・本格的に研究を始めたのは6年前、・・・私は古代を研究してきて、中世はほとんど研究していなかったんですが、ここにきて河勝とともに世阿弥が私に乗り移った。(p20)
世阿弥は矛盾の人だと私は思います。曲を作る上で、その矛盾を実に上手に使い分けています。(p20)
観阿弥は主に劇能でしょう。物語に沿って時間が経っていく。一方、世阿弥は複式夢幻能で、後場になると昔に遡る。(p21)
若くして元雅が死んだとき、・・・世阿弥は・・・元雅は祖父とも自分とも違った優れた能作者だったと記している。・・・暗い曲ばかり作りましたが、元雅は世阿弥が言うように非常に優れた能作者であったと思います。(p22)
まもなく角川学芸出版から『能を読む』(全4巻)が出ますが、梅原・清和の他にも同シリーズに関わっている松岡心平が「花に憑かれて、花を伝える 『風姿花伝』」を寄稿。
花を追求しようとして『風姿花伝』を著した世阿弥の最後の結論は、「さればこの道は窮め終はりて見れば、花とは別(べち)にはなきものなり」であった。世阿弥にとって、実体的、固定的な花などあるべくもなく、「ただ時に用ゆるをもて花と知るべし」のように、観客との出会い、チャンスこそすべてであって、「花」が生まれるかどうかは、まさに明日を知れぬ賭け、なのである。(p26)
「一期一会」、ということでしょうか。
増田正造は、狂言(「たくましき笑いの力」)、面(「面は能役者の魂」)、能装束(「大胆、華麗にしてモダーン 能装束の美学」)について解説。内田樹が、安田登との対談「この名曲はここがスゴイ! 厳選だいたい35曲」及び「武道家の能楽稽古」。囃子の解説(「言葉にできない世界を奏でる」)が大倉源次郎で、能の歴史(「散楽から神事、式楽から教養へ 戦う能の1300年」)が横山太郎
そして本誌はヴィジュアル系も充実。「「羽衣」 二十六世観世宗家、天女となる」、「観世三郎太、13歳 小品の大曲「鷺」を舞う」。マンガ仕立てで「能楽堂へ行こう」(近藤ようこ横山太郎)。「若手能楽師坂口貴信の多忙なる2週間」ってのもおもしろい。坂口貴信(さかぐち・たかのぶ1976-)は「観世流シテ方の若手ホープ」(p77)だそうです。
ないものねだり^^ですが、これでCDかDVDがついてたら(『高砂』『船弁慶』『井筒』などから収録)、最高でしょうね。
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by tiaokumura | 2012-12-09 11:21 | 謡を習う | Comments(2)

観世流3題

昨日の記事の富山の天気、訂正が必要ですね。今朝のNHK「おはよう日本」(アナウンサー、痴漢で逮捕されましたね)の天気予報を見てたら、今週の最低気温は5℃前後、最高気温は15℃を下回る日が多いみたいです。「秋の日はつるべ落とし」とか言いますが、秋から冬にかけての気温も週を追うごとに「つるべ落とし」状態なんでしょうか。

川田有紀子先生(観世流華川会に謡を習い始めてから3年くらい経つでしょうか。入門者の「鶴亀」が終り、次に「橋弁慶」に入り、同時進行で富山国際学院の卒業式で披露しようと思ってる仕舞「高砂」を半分くらいまで習って・・・生来の怠け癖(恥)にプラス末期癌が発覚して、お稽古はストップしたままです。もう少し体力が回復したら再開したい気持ちはありますが、どうなることやら。
本日のブログ記事、観世流絡みで3題。自分、檜書店のメルマガ「能楽便り」(週1回発行)を取っている(無料)。以下は、そこからの情報展開です。

1)「風姿花伝 観世宗家展」
奥村:以下、公式サイトより引用。展覧会期間中、東京に行くことがあれば、鑑賞してみようかと。
2013年、観世流の流祖として知られる観阿弥生誕680年、世阿弥生誕650年の節目を迎えます。それを記念して、東京・銀座の松屋にて「風姿花伝 観世宗家展」が開催される運びとなりました。
【会期】2012年12月27日(木)~2013年1月21日(月) ※元日は休業
【会場】松屋銀座8階イベントスクエア
【入場時間】午前10時~午後8時 ※入場は閉場の30分前まで
      (年末年始は一部、営業時間が異なります)
【主催】NHKサービスセンター
【企画】東映
【協力】観世宗家、財団法人観世文庫
【監修】二十六世観世宗家・観世清和、松岡心平(東京大学教授)
本展覧会では、世阿弥自筆の『風姿花伝』や徳川秀忠公拝領の狩衣、平安時代の能面師・弥勒作「翁」など、観世宗家に伝来する貴重な能装束・能面・能楽資料など約130点を一堂に公開いたします。時代を超え、受け継がれてきた至宝の数々を御覧頂く、またとないイベントです。どうぞご期待ください。

2)能を読む(全4巻)
奥村:すごい本が出ます。監修が梅原猛、観世清和。編集委員に中沢新一・松岡心平ら。値段が自分には無理な設定なので買えませんが、図書館で見てみようかと。
発行:角川学芸出版
予価:各巻6825円(税込)
刊行:平成25年1月より隔月4回
第1巻 能と観阿弥―能の誕生―
演者:観世清和・野村萬斎・宝生閑他
論考:梅原猛・松岡心平・渡辺保他
収録曲:「翁」と観阿弥ほか世阿弥以前の能19曲を収録。
第2巻 世阿弥―神と修羅と恋―
演者:観世清和他
論考:梅原猛・馬場あき子他
収録曲:世阿弥作の能36曲を収録。
第3巻 元雅と禅竹―夢と死とエロス―
演者:観世清和・観世銕之丞・友枝昭世
論考:梅原猛・中沢新一他
収録曲:元雅や禅竹ほか、世阿弥と同時代の能38曲を収録。
第4巻 信光と世阿弥以後―異類とスペクタクル―
演者:大槻文藏・観世清和他
論考:梅原猛・松岡心平他
収録曲:信光、禅鳳ほか、世阿弥以後の能35曲を収録。

3)2013年(平成25年)能カレンダー
奥村:来年のカレンダー、出てますね。時にはこういうカレンダーもいいのでは。
定価:1500円(税込)
表紙「江口 平調返」観世清和 「菊慈童」観世三郎太
1月「羽衣 和合之舞」大江又三郎
2月「三笑」下川宜長・田中章文・勝部延和
3月・4月「石橋 大獅子」髙梨良一・髙梨万里
5月「杜若 素囃子」赤瀬雅則
6月「水無月祓」近藤幸江
7月・8月「小袖曽我」角幸二郎・坂口貴信
9月「班女」松木千俊
10月「姨捨」観世銕之丞
11月「阿古屋松」観世清和
12月「雪 雪踏ノ拍子」松野恭憲

財団法人観世文庫の公式サイトはこちら
檜書店のホームページはこちら

(追記)
今朝の日本経済新聞の案内記事より。
舞歌の至芸
日時:11月29日(木) 午後3時・午後7時
会場:日経ホール
プロデュース:亀井広忠(能楽師大鼓方)
出演:観世清和 梅若玄祥 観世銕之丞
囃子方:亀井忠雄(大鼓) 一噌幸弘(笛) 他
午後3時の部(一部のみ紹介)
舞囃子:「実盛」(銕之丞) 「定家」(清和) 「野守」(玄祥)
居囃子:「定家」(地謡:清和 玄祥 銕之丞 観世喜正)
午後7時の部(一部のみ紹介)
舞囃子:「屋島 大事」(清和) 「鸚鵡小町」(玄祥) 「春日龍神」(銕之丞)
居囃子:「鸚鵡小町」(地謡:清和 玄祥 銕之丞 観世喜正)
正確なプログラムこちらご参照。 
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by tiaokumura | 2012-11-18 09:06 | 謡を習う | Comments(0)

観世流 富山松友会「六十周年記念秋季能楽大会」

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10月14日(日)11時、ヤンキースvsタイガースを途中まで観て、車で家を出る。富山県立近代美術館近くのサンマルク(SAINT MARC)で昼食。このレストランは、カップル・家族連れ・女性客が主で、孤独なジジイ^^には似合わない店。しかしながら食事に困っている癌患者としてはア・ラ・カルトがあるので重宝する店である。コーンスープ+イタリアンサラダ+ブラマンジェ フルーツ添え。完食できた。パンが売りの店だが、パンは出なかった(パンは食べ放題だと思っていた。単品注文だったからダメだったんでしょうか)。
お昼頃、富山能楽堂着。この日は、先日松下覚さん(富山松友会会長)からご案内いただいた、「観世流 富山松友会:六十周年記念秋季能楽大会」。午前は素謡4番、仕舞7番。僕は、昼から出席。

正午過ぎ、「『囃子コンサート・ワークショップ』能楽の囃子について」。これは僕のようなド素人にはとてもよい企画だった。ワークショップと云っても観客参加型ではなく、講義実演形式。初めに小西弘通師の挨拶・紹介。その後、阪神能楽囃子連盟「調和会」メンバーの4人によるワークショップ。笛(能管)が赤井要祐師、小鼓が上田敦史師、大鼓が上野義雄師、太鼓が上田慎也師。上野師は還暦で後の3人は30代・40代か。赤井師は祖父・父の三代目、両上田師は兄・慎也、弟・敦史の兄弟。
敦史師による囃子の解説。①「笛(管楽器)+打楽器3」は、世界の音楽の中で珍しい構成。②笛は基音(五音階)がない。生死の間を司る。③打楽器3つは、朝・日の出・命の鼓動を司る。④鼓は馬の皮・櫻の木でできており、太鼓は牛の皮・欅の木でできている。⑤小鼓が陰、大鼓が陽。太鼓のバチは左が陽,右が陰。⑥現在物では太鼓は登場しない。太鼓の刻みは鬼・幽霊の登場。⑦囃子は、木々のざわめき・川のせせらぎ・虫の声など自然界の音に近い。これら自然界の音は西洋人には雑音である(右脳と左脳)。⑧能は呪術であり、能舞台はこの世とあの世の狭間、結界。
実演は素囃子「祈り」。『安達原』『道成寺』などで使われる囃子だそうです。

午後の番組は順に、独鼓『天鼓』、舞囃子『葛城』『胡蝶』『山姥』、素謡『鉢木』、舞囃子『難波』『杜若』『安宅』、素謡『遊行柳』、番囃子『船弁慶』、番外仕舞『菊慈童』『善知鳥』。『船弁慶』(観世小次郎信光・作)は今年これで3回目の鑑賞である。
観世流謡本では『善知鳥』は世阿弥元清作と明示してあるが、梅原猛『梅原猛の授業 能を観る』(朝日新聞出版)では「作者は不詳」だが「私は『善知鳥』は世阿弥の曲に違いないと思います」(p162)。『善知鳥』は菅江真澄(すがえ・ますみ1754-1829)も触れているんですね(同書pp153-155など)。梅原・同書から世阿弥作説を引用。
私は・・・世阿弥も権力者に逆らって、うつぼ舟に乗せられて佐渡へ流されたと考えていますが、「善知鳥」もうつぼ舟と深く関係しているのです。そして世阿弥の流された佐渡からはもしかしたら立山が見渡されたのではないでしょうか。佐渡もまた流人の流された最果ての地です。私はこのような運命の中で、世阿弥はつくづくと、最果ての地で殺生する以外に生きる術のないしがない猟師の運命を思って、このような名曲を後世に残したのではないかと思うのです。(p163)
なお同書には『卒塔婆小町』『清経』『井筒』『善知鳥』『弱法師』『杜若』『安宅』『道成寺』など15曲が取り上げられています。『船弁慶』は「怨霊鎮め」の例として出てきます(p289)。
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by tiaokumura | 2012-10-15 08:15 | 謡を習う | Comments(0)