思い出の本たち(2)小笠原豊樹訳『プレヴェール詩集』

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小笠原豊樹
プレヴェール詩集
昭和42(1967)年12月初版
河出書房
定価(当時)260円

ジャック・プレヴェール(Jaques Prévert。1900-77)
小笠原豊樹(おがさわら・とよき。本名岩田宏。1932-)

このブログのカテゴリ「思い出の本たち」第2弾はこれです。発行日からすると僕が21歳の時に買ったことになる。河出書房(このときは倒産前なんでしょうね)「ポケット版 世界の詩人」全12巻の第11巻。同シリーズは他に、手塚富雄訳(以下同じ)『ゲーテ』・高安国世『ハイネ』・木島始『ホイットマン』・福永武彦『ボードレール』・清岡卓行『ランボー』・大岡信『ジャム』・生野幸吉『リルケ』・高橋健二『ヘッセ』などで、最終巻が谷川俊太郎編『愛の詩集』という超豪華なラインナップ。今揃いで持ってたら5万円以上はするでしょうね。お金で詩が買えるもんじゃあないけど(爆)。
この詩集、実にオシャレで、まずカバー(上の写真がそうです)はピカソ「恋人たち」(部分)。巻頭16ページにわたって写真とプレヴェールの詩の一節など。パリの朝方の渋滞写真にかぶせて「大きな赤い/冬の太陽が/グラン・パレの上に現れ(以下略)」(「大きな赤い」)、セーヌ河でしょうか川岸に置いた椅子に鳥の写真には「ほんとうは生きたい鳥/ほんとうは歌いたい鳥/ほんとうは叫びたい鳥/血のように赤くて暖かい鳥/とても静かに飛ぶ鳥(以下略)」(「鳥さしの唄」)、魚眼レンズで撮ったのでしょうかパリジェンヌの顔の写真には「はがねのむすめ あたしは誰にも惚れなかった/誰にも惚れなかった 惚れたひとのほかには(以下略)」(「はがねのむすめ」)、あるいはミロの「かたつむりの燐光を放つ軌跡に導かれた夜の男」(部分)の絵。
小笠原豊樹による「解説」は、現在読んでもこれ以上緻密で詳しいプレヴェール紹介はないだろうというレベル(ただしこの詩集の刊行当時プレヴェールは存命)。解説上部には、映画『天井桟敷の人々』(マルセル・カルネ監督、プレヴェール脚本。1943-44)の写真2葉、エルンストの絵、モンタンやグレコの写真など。そして巻末には「Les feuilles mortes」(邦題「枯葉」)の楽譜、プレヴェールの作品一覧。

小笠原豊樹(岩田宏)は北海道倶知安生まれ、東京外大ロシア語科中退。ユリイカや思潮社から詩集刊行。一方でフランス語・ロシア語などの翻訳も多数。60年代・70年代を語るとき逸してはならない方でしょうね。

実はこの本、人に1回あげてるんですね。その人とは誰あろう^^、このブログのご常連「哲ちゃん」。最後のページに僕の下手糞な字で、「謹呈○○哲○○様 1969年5月8日」と書いてある。あの頃は人が読んでる本を負けじと読んだり、互いに本の情報交換したり、時には本をあげたりもらったり(ボクの場合はもらうことの方が多かったけど^^)したものである。青春なんでしょうね。この本の場合、日付から判断するに、いったん都落ちすることになった僕が哲ちゃんにあげたのかもしれない。

著作権にひっかかるかもしれませんが、プレヴェールの数多くの詩の中であの当時僕が一番好きだった詩を以下に掲載。
プレヴェール「唄」(小笠原豊樹訳)
きょうはなんにち
きょうは毎日だよ
かわいいひと
きょうは一生だよ
いとしいひと
ぼくらは愛し合って生きる
ぼくらは生きて愛し合う
ぼくらは知らない 生きるってなんだろう
ぼくらは知らない 日にちってなんだろう
ぼくらは知らない 愛ってなんだろう。

『プレヴェール詩集』(「ポケット版・世界の詩人11」河出書房。昭和42年12月)p.69
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by tiaokumura | 2008-11-23 21:29 | 思い出の本たち | Comments(2)
Commented by memerina at 2008-11-25 21:04
いい詩ですね。
最近めっきり詩というものに触れる機会が減ってしまいました。
新しいインスピレーションが浮かぶもの、私は大好きです。
素敵な詩があれば、また是非紹介してください。

卒論に見事に行き詰っている後輩より
Commented by tiaokumura at 2008-11-29 09:47
「卒論に見事に行き詰っている後輩」さま、コメント、ありがとう。僕なんか、もっと悲惨じゃったっす。1月4日、お屠蘇気分も抜けて「さ~卒論」と思ってガクゼン。それまでのデータ分析、根本的に間違っとった!締切りまで2週間なんにネ。それでも卒業できたんじゃから、まぁ何とかなるもんなんかも。
「ガチャ玉」、memerinaの3倍くらい人生しとるけんど、ワシも知らんかったっす(爆)。
詩なんて似合わんワシじゃけんど(照)、リクエストにお応えして、いつかまた紹介します。


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