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清水勲『年表 日本漫画史』(臨川書店)

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清水勲(帝京平成大学教授 京都国際マンガミュージアム研究顧問)
年表 日本漫画史
臨川書店
2007年6月1日 初版
2200円+税

京都は、サルトルの人文書院、茶道の淡交社など個性あふれる出版社がある感じがします。ミネルヴァ書房法蔵館書店も確か京都。京都学派や京都人文研の学者さんたちが育ててる面もあるのかもしれないし、それより遥か昔の平安朝あたりから「書物」(写本・活字本を問わず)に対する思い入れが特別な土地柄なのかもしれません。きっとそう。臨川書店も京都にある出版社(名前からして京都!って感じ^^)。最近では『ヘルマン・ヘッセ全集』刊行。僕たちが読んだヘルマン・ヘッセは高橋健二訳で、臨川書店版はきっと新訳。中央(ここでは東京)におもねらない京都の出版社、いつまでもその独自性を発揮し続けてほしいものです。

清水勲の名を知ったのは、僕の場合、岩波文庫『ビゴー日本素描集』(中学歴史の教科書にビゴーの漫画、必ず載ってますよね)が出る前あたり。漫画研究家では第一人者です。この本、序章で「日本漫画史大観」、以下1章から7章まで時代順に叙述。「第7章 平成期」は「平成ビッグヒット作品史」「マンガミュージアム設立史」「マンガ喫茶の歴史」「平成マンガ史」などの節立て。僕があまり正確に知らないことが多い章。その前の章「昭和(戦後)期」(約30ページ)はリアルタイムで体験してるので興味深く読める。
見開き1テーマ、右ページが解説、左ページが年表・図版と読みやすく工夫された構成で、巻末資料には「戦後の漫画家・漫画関係者没年一覧」などもついています。労作なので3000円超でもいいくらいの本ですが、2200円+税で抑えてあるのもありがたい。
僕が一番好きな漫画家は永島慎二ですが、彼も「ガロ」もあまり評価されていないのが残念。

いつだったか政府がコミック・ゲームなどに強い日本語教師を海外に派遣する計画があるという新聞記事を読んだ。日本のソフトパワー。パリでもコスプレが盛んだそうだけど、でもなんか?にも感じる政府案。ま、もしそういうので派遣される日本語教師の方がおられたら、『年表 日本漫画史』、基本図書として赴任地に持って行くといいのではないかと思います。
by tiaokumura | 2008-02-04 18:43 | | Comments(3)
Commented by 哲ちゃん at 2008-02-05 09:02 x
京都の個性的な出版社といえば,他に現代数学社があります。僕らが学生の頃,正確には1968年に『現代数学』という月刊雑誌が創刊され,まだ40歳くらいだった森毅さんが,じつに刺激的で個性溢れる連載を書かれていて,僕も大きな影響を受けました。それらは後に『現代の古典解析』(今はちくま学芸文庫)や『数学の歴史』(今は講談社学術文庫)などに結実しています。この雑誌は,その後『BASIC数学』『理系への数学』と名前を変えて,現在も頑張っています。
もう一社,京都大学学術出版会も,たとえばギリシャの古典の翻訳シリーズなんか,僕は注目しています。
Commented by 哲ちゃん at 2008-02-05 09:07 x
『ガロ』とか永島慎二,なつかしい! マイナーな名前だったけれど,勝又進の四コマ漫画も好きだったなぁ。『ガロ』の勝又進特集号を,いまも持っています。勝又さんは東京教育大学の物理学科出身で,僕らよりも3つ4つ上だったと思う(我々の在学中は大学院生だったはず)。昨年亡くなられましたね。
ついでに言うと,清水勲という人は,たしか立教大学の数学科出身だったと思います。
Commented by tiaokumura at 2008-02-09 16:15
哲ちゃん、森さん、昔からああいう印象かと思ってますが、40代ころは「おじいさん」じゃないんですよね^^。
勝又進、ボクもちょっと読んでる。教育大物理ですか。教育大って、池田理代子と少なくとも2人の漫画家を生んでる大学なんですね。すごい。
清水勲、立教数学っての意外。
いつも貴重な情報、ありがとうです。


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