人気ブログランキング | 話題のタグを見る

マルガレーテ・フォン・トロッタ監督『ハンナ・アーレント』

マルガレーテ・フォン・トロッタ監督『ハンナ・アーレント』_f0030155_16233521.jpg岩波ホールで世に知られた名画は数多くあるでしょうが、この映画もその一つでしょうね。富山では、このブログご訪問者にはすっかりお馴染みでしょうが^^フォルツァ総曲輪で上映中。2月15日(土)、観てきました。
アドルフ・アイヒマン(1906-62)のことは覚えていました。僕は中学生だった頃。ナチスの残党がイスラエルの秘密警察によって潜伏先のアルゼンチンで逮捕、イスラエルに移送されエルサレムで裁判、絞首刑に処せられる-そんな記憶です。ハンナ・アーレント(Hannah Arendt1906-75)のことは今回初めて知った。映画パンフレットの池内紀によると「ナチ政権の誕生とともに逮捕され、南フランスの収容所に入れられたが脱走し、パリに潜伏して反ナチ活動をしていた。ドイツ軍のパリ侵攻を見こしてアメリカに亡命し、無国籍のままニューヨークでジャーナリストとして活躍」(p10)。あの当時「アイヒマン裁判」の絡みでハンナ・アーレントのことはどの程度日本で取り上げられていたんでしょうね。少なくとも当時中学生の僕は全く見聞きしなかった名前。変な対比だが、アイヒマン裁判とアーレントって、日本国憲法とベアテ・シロタ・ゴードンと類推される。

ハンナ・アーレント』(原題HANNAH ARENDT)
世界的スキャンダルを巻き起こした ナチス戦犯アイヒマンの裁判レポート 悪とは何か、愛とは何かを問いつづけた 哲学者アーレント、感動の実話
2012年 ドイツ・ルクセンブルク・フランス 英語・ドイツ語 1時間54分
監督:マルガレーテ・フォン・トロッタ(Margarethe von Trotta1942-。1986年『ローザ・ルクセンブルク』など)
脚本:バメラ・カッツ(Pamela Katz)  マルガレーテ・フォン・トロッタ(Margarethe von Trotta)
キャスト:
バルバラ・スコヴァ(Barbara Sukowa1950-。ハンナ・アーレント) アクセル・ミルベルク(Axel Milberg1956-。ハンナの夫のハインリヒ) ジャネット。マクティア(Janet McTeer1961-。ハンナの友人の作家メアリー・マッカーシー) ユリア・イェンチ(Julia Jentsch1978-) 他
日本語字幕:吉川美奈子
公式サイト:こちら

アーレントは「悪の凡庸さ」がよく引用されるが、この映画では以下のよう(パンフレットの「採録シナリオ」より引用)。
・・・彼(アイヒマン)は検察に反論しました。「自発的に行ったことは何もない。善悪を問わず、自分の意志は介在しない。命令に従っただけなのだ」と。
こうした典型的なナチの弁解で分かります。世界最大の悪は、平凡な人間が行う悪なのです。そんな人には動機もなく、信念も邪心も悪魔的な意図もない。人間であることを拒絶した者なのです。そしてこの現象を、私は「悪の凡庸さ」と名づけました(p36。シナリオ採録=春日いづみ)
21世紀の今、アーレントが言いたかったことは理解されるだろうが、あの時代の文脈ではアーレントのアイヒマン裁判レポートのザ・ニューヨーカー誌連載は、「アイヒマン擁護」として激しく糾弾されるしかなかった「スキャンダル」なんでしょうね。
映画では哲学の師マルティン・ハイデガー(1889-1976)とアーレントの恋愛シーンもあるが、どうなんだろう、脚本の意図は。僕にはちょっとわからなかった。

参考:Wikipedia"Hannah Arendt"より一部引用
In her reporting of the 1961 Adolf Eichmann trial for The New Yorker, which evolved into Eichmann in Jerusalem: A Report on the Banality of Evil (1963), she coined the phrase "the banality of evil" to describe Eichmann. She raised the question of whether evil is radical or simply a function of thoughtlessness, a tendency of ordinary people to obey orders and conform to mass opinion without a critical evaluation of the consequences of their actions and inaction. She was sharply critical of the way the trial was conducted in Israel. She also was critical of the way that some Jewish leaders, notably M. C. Rumkowski, acted during the Holocaust. This caused a considerable controversy and even animosity toward Arendt in the Jewish community. Her friend Gershom Scholem, a major scholar of Jewish mysticism, broke off relations with her. Arendt was criticized by many Jewish public figures, who charged her with coldness and lack of sympathy for the victims of the Holocaust.
by tiaokumura | 2014-02-15 16:23 | 映画 | Comments(2)
Commented by のぶ at 2014-02-22 08:37 x
今日の読売朝刊「時の余白に」で、ハンナ・アーレントが書かれていました。「昭和時代」では、富山の大空襲が書かれていました。
Commented by tiaokumura at 2014-02-23 08:42
のぶ様、僕も讀賣、読みました。①アーレント、「悪の凡庸さ」の指摘よりもユダヤ人のナチ協力を発表(告発?)したほうがあのような糾弾になったのかも。②以前このブログでも書きましたが、ルメイに勲一等を授与する日本ってなんとまあ。


<< 思い出の本たち:岩波日本思想大... ワールド・フェスティバル「Ea... >>