吉本隆明「思考の話」(『数学セミナー』1970年11月号)

2014年1月12日付の当ブログ記事「吉本隆明全集(晶文社)」に、わが畏友・哲ちゃんがコメントを寄せてくれた。

『吉本隆明全集』がいよいよ出るのだなぁ!
順調に刊行が進むとして,完結まで丸7年かかる。出版社として,よくぞ踏み切ったものと,エールを送りたい。
大学2年のときだったか,吉本の詩「固有時との対話」のことを貴兄から教えてもらったのが,ぼくの吉本との出会いだった。その後,ずいぶん彼の作品を読んだものです。
全集,ぼくも読みたい。

僕が彼に「固有時との対話」を教えてたなんて、まったく意外。あのころ(もう半世紀近く昔^^になる)は、僕に限らずみ~んな「背伸び」してたんでしょうね。青春の甘く苦い思い出かも(照)。
続いて、哲ちゃんは再度のコメントで吉本のエピソードについて書いてきてくれた。

ぼくが携わっていた『数学セミナー』には,TEA TIMEという随筆欄があって,数学を専門としない著名人に,数学についての思い出や考えなどを書いてもらっていた。1970年4月に入社してまもなく,編集会議でこの欄の執筆者候補が話題になったとき,ぼくが吉本隆明の名前を挙げたところ,編集顧問の遠山啓先生が,「そうだ,吉本に頼んだらいい」と,即座に賛成された。
その年の11月号に掲載された「思考の話」をpdfにてメールで送ります。
校正のとき,一二点,確認すべきことがあったので,吉本さんに電話をして,少し話をしたのだけれど,とても丁寧で,気持ちの好い応対をされたことが強く印象に残っています。
1979年9月,遠山啓先生が亡くなられて,ぼくは葬儀で受付の手伝いをした。夕方近くに吉本さんが来られて,知り合いの人たちと何やら話しておられた姿を,ぼくは遠くからときどき見ていたのだった。


後日、「思考の話」がメール添付PDFで送られてきた。読んでみるも、ちょー難しい(恥)。記事中の吉本隆明(よしもと・たかあき1924-2012)の写真、40代後半でしょうね、若々しい。
エッセイは集合の話から始まる。4月から中学に入学の「娘」が出てきますが、長女のハルノ宵子(はるの・よいこ1957-)のことでしょうね。あの頃、中学数学教科書に「集合」が入ったっての、話題になってた記憶がある。矢野健太郎の本が売れてちょっとした数学ブームだったのもあの頃だったかも(記憶が違ってたらご寛恕を^^)。著作権があるので哲ちゃんからのPDFはアップしません。今回の全集が「書かれたすべての著作を断簡零墨にいたるまで収録し」「単行本未収録の評論・エッセイ・推薦文など二百七十余編をはじめて収録」(全集内容見本より引用)とのことですので、この「思考の話」も第11巻(1966-1972)あたりに収められることでしょう。
「思考の話」には遠山啓(とおやま・ひらく1909-79。1944年、東工大助教授。1949年から同教授)が出てくる。ネットで検索すると「TETRA’S MATH」というサイトの記事がヒットしました。そこ(「吉本隆明が受けた遠山啓の講義」)に吉本の文章が引用されており、孫引きになりますが、吉本にとって遠山は「敗戦にうちのめされた怠惰で虚無的な学生のわたしが、一度も欠かさずに最後まで聴講したたったひとつの講義」であった。
「思考の話」では、認識論になるのでしょうか、吉本が命題1・命題1の系・命題2を立てて空間と時間について論じている。文章中で「数学について語るには、あまりに資格を喪失しすぎたわたし」と謙虚ではあるが、この前には『言語にとっては美とはなにか』を上梓し、このころから後に『共同幻想論』『心的現象論』が続くのだから、吉本にとってはまさに「思考」が言語化され深化し焦点化する時期にあたるのでしょうね。

余談ですが、今年のセンター試験の「数学1・数学A」の第1問〔2〕は集合の問題でしたね。
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by tiaokumura | 2014-01-29 08:43 | | Comments(0)


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