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「フェルメール光の王国展」in TOYAMA

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この間、地元の民放がフェルメール(Jan Vermeer van Delft1632-75)のTV番組を放映していた。なんでだろうと思って見ていたら、この展覧会が富山であるからなんですね。

福岡伸一 監修・総合
「フェルメール光の王国展」in TOYAMA
フェルメール全37点のリ・クリエイト作品を一堂に展示。
富山市民プラザ(2階ギャラリー)
~2014年1月29日(水)
観覧料 一般・大学生900円 小・中・高校生450円
公式サイト:こちら

これ、僕は去年、東京のフェルメール・センター銀座で観ている。その時のブログ記事はこちら。こういうのも「巡回」って云うのでしょうか、事情は分かりませんが、富山でも開催。ただ、銀座の時は鑑賞定員限定でワイン付きで、富山会場にない「しかけ」もいくつかあったように思う。
前記事の中山公男『西洋の誘惑』(1968年。新潮社)から引用。中山は『デルフトの眺望』(1658年頃。マウリッツホイス蔵)を取り上げている。
・・・この絵の良さは、この地方の街の視覚的印象と完全に同質のものであり、その空気のなかに、その光のなかに入ることのない限り、永遠に把握しえないものであったのだ。まるでけし粒のような微細なタッチが、家並みの形や一枚ずつの煉瓦や瓦の質感までを表現している。港に憩う舟の帆柱や船腹の板の長い航海に疲れた質感すら見える。画面上方三分の一を占める空の雲のにぶい輝きと微妙な色彩のうつり変わりは、この低地帯の空の完全な表現である。空と家と舟を映す水面はさらに美しい。絵の前に立っているとき、私は完全に、この凝縮化され、微視化され、近視化された風景のなかに入りこんでしまっている私自身を感じた。(p29)
なお、同書には『デルフトの眺望』が白黒図版で収められている。技術かコストか著作権かわかりませんが、この本、図版は1枚を除き全て白黒です。45年ほど前に初めてこの本を読んだときにはそういうことが気にならなかったのは、今になってみると摩訶不思議。時代、だったのか、僕の想像力が豊か、だったのか。

今回観ていて、re createってやっぱり空しいと思った。遠目にはともかく、近寄ってみると、立体感に欠け本物の持つ色彩感は再現できていない。そりゃそうでしょうね、いくら技術が進化したって本物の持つ迫力にはかなわない。小泉八雲の怪談で、振り向いた蕎麦屋が「ノッペラボー」だったシーンが思い浮かぶ。
そうは言いながら、このような試みに果敢にチャレンジした福岡伸一をはじめとするスタッフには敬意を表する。同展カタログからメンバーの一部をご紹介。
作品製作:廣済堂 プリンティング・ディレクター:木村文男(廣済堂) キャンパス製作:船岡廣正(フナオカ・キャンパス) 額装:高野淳一

福岡伸一(ふくおか・しんいち1959-)には『フェルメール光の王国』(2011年8月。木楽舎)がある。
by tiaokumura | 2013-12-23 16:02 | 美術 | Comments(8)
Commented by トパーズ at 2013-12-29 03:35 x
奥村隆信先生、はじめまして。先生のひとりごとは、以前から拝見いたしておりました。フェルメール、私の好きな画家です。リクリエイト、残念です。子供達には本物を見てほしいです。リクリエイトの作品も拝見してきます。寒くなりましたので、お体大切におすごし下さい。私は8月に父を亡くしました。涙の乾かない毎日を過ごしています。
Commented by tiaokumura at 2013-12-29 15:33
トパーズ様、ご訪問並びに初コメント、ありがとうございます。市民プラザ、けっこう長期間やってるみたいです、ご覧になるといいと思います。確かに「本物を・・・」なんですが、ああやって全点が配列されているのを見るのもなかなかの体験です。
お辛い年だったのですね。でもそういう娘さんを持ったお父上はお幸せな方だと思います。
拙いブログですが、今後とも「日本語教師・奥村隆信 ひとり語り」をよろしくお願いいたします。
PS 文面から「女性」と思いましたが、間違っていたらご容赦を。
PSs 11月のお生まれですか。
Commented by トパーズ at 2013-12-29 17:56 x
御返事ありがとうございます。10月生まれ、女性です。失礼致しました。誕生石はオパールですが、トパーズもいろいろなカラーがあり、どちらも大好きな宝石です。ダイヤモンドの様に透明な心で生活して行きたいと思います。父は富山県立中央病院で40日間、二回目の入院をしましたが、一度も回診されず、お風呂も入れて貰えず、脳梗塞とガンながらも手も足も動き、自分で食事もしていたのに、安静だけで寝たきりになりました。三回目の自分で入院すると言った中央病院では何の手当てもされず絶望し涙を流しながら天に召されました。悔しかったと思います。
Commented by tiaokumura at 2013-12-31 14:02
トパーズさま、2回目のコメントありがとうございます。
C病院、そうでしたか。実は僕も、僕の癌ではありませんが、同病院には関わりがあります。2003年のお正月は同病院の9階で迎えました。お父上のこと、極めてお悔しいことでしょう。なんとも申し上げようがありません。
いつかお会いできそうな気がします。その節はよろしくお願いいたします。
Commented by トパーズ at 2014-01-04 10:56 x
そうですね。私もいつかどこかで先生におあいできるような気がいたします。お話したい事がたくさんあります。ご縁を大切に致したいと思います。その時はよろしくお願いいたします。年末からバタバタと過ごしておりますが、お抹茶をたてて、美味しい和菓子で一服、そんなゆとりのあるひとときを、まだ持てずにおります。美しい日本語、日本人である私達でさえ、忘れかけている素晴らしいいにしえの日本語、外国の方達にも伝承していけたらいいですね。先生、寒い日が続きます。どうぞお身体御大切におすごし下さいますように。
Commented by tiaokumura at 2014-01-11 14:25
トパーズさま、新しい年をお健やかにお迎えのことと存じます。年が改まると気分も改まるとか。トパーズさんの場合、なかなかそういう心境になられないかもしれませんが。
和の世界、お似合いだと思います。僕はなかなかそういうのは「外れ人間」ですが、学生と接してて「日本人」ってぇのはやっぱりよく感じます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
Commented by トパーズ at 2014-03-29 16:56 x
フェルメール展、二日間続けて、行ってきました。二日目は三時間かけてじっくりとみてきました。なんとなくわかったような気がします。絵の中の人々の思いを感じとる事ができ、カーテンやドレスの質感を感じ、楽器の音が聴こえてくるようでした。絵の中に入ってしまったような不思議な感覚でした。光の表現にうっとり、良い絵画展に出会えた事に感謝しています。今度はレンブラントの絵画展をひそかに期待しています。
Commented by tiaokumura at 2014-03-31 07:50
トパーズ様、立て続けのコメント、ありがとうございました。
レンブラント、いいですねぇ。
昨年は僕にとって展覧会の当たり年でしたが、今年は今のところあまり・・・。地元で3つ、年内に行きたいのがあります。
拙いブログですが、これからもよろしくお願いいたします。いつかどこかでお会いできますように。


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