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『芸術新潮2012年12月号 特集 はじめて観る能』(新潮社)

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芸術新潮 2012年12月号』
「特集 観阿弥生誕680年 世阿弥生誕650年記念 はじめて観る能
2012年11月24日発売
新潮社
定価1400円

「はじめて観る能」ってことで初心者向けであることは間違いないのですが、だからと云ってイージーな作りではなく、こういうことを知識として持って能楽鑑賞をするときっと深い感動が味わえるだろうなという丁寧な作りの本です。これまでに雑誌・ムックで「能入門」って何回もあったのでしょうが、僕には初めてです。
対談「観阿弥・世阿弥 天才の系譜」が梅原猛(うめはら・たけし1925-)と観世清和(かんぜ・きよかず1959-)。この企画でこれ以上ないっていう組み合わせの二人でしょうね。梅原の発言から。
私が・・・本格的に研究を始めたのは6年前、・・・私は古代を研究してきて、中世はほとんど研究していなかったんですが、ここにきて河勝とともに世阿弥が私に乗り移った。(p20)
世阿弥は矛盾の人だと私は思います。曲を作る上で、その矛盾を実に上手に使い分けています。(p20)
観阿弥は主に劇能でしょう。物語に沿って時間が経っていく。一方、世阿弥は複式夢幻能で、後場になると昔に遡る。(p21)
若くして元雅が死んだとき、・・・世阿弥は・・・元雅は祖父とも自分とも違った優れた能作者だったと記している。・・・暗い曲ばかり作りましたが、元雅は世阿弥が言うように非常に優れた能作者であったと思います。(p22)
まもなく角川学芸出版から『能を読む』(全4巻)が出ますが、梅原・清和の他にも同シリーズに関わっている松岡心平が「花に憑かれて、花を伝える 『風姿花伝』」を寄稿。
花を追求しようとして『風姿花伝』を著した世阿弥の最後の結論は、「さればこの道は窮め終はりて見れば、花とは別(べち)にはなきものなり」であった。世阿弥にとって、実体的、固定的な花などあるべくもなく、「ただ時に用ゆるをもて花と知るべし」のように、観客との出会い、チャンスこそすべてであって、「花」が生まれるかどうかは、まさに明日を知れぬ賭け、なのである。(p26)
「一期一会」、ということでしょうか。
増田正造は、狂言(「たくましき笑いの力」)、面(「面は能役者の魂」)、能装束(「大胆、華麗にしてモダーン 能装束の美学」)について解説。内田樹が、安田登との対談「この名曲はここがスゴイ! 厳選だいたい35曲」及び「武道家の能楽稽古」。囃子の解説(「言葉にできない世界を奏でる」)が大倉源次郎で、能の歴史(「散楽から神事、式楽から教養へ 戦う能の1300年」)が横山太郎
そして本誌はヴィジュアル系も充実。「「羽衣」 二十六世観世宗家、天女となる」、「観世三郎太、13歳 小品の大曲「鷺」を舞う」。マンガ仕立てで「能楽堂へ行こう」(近藤ようこ横山太郎)。「若手能楽師坂口貴信の多忙なる2週間」ってのもおもしろい。坂口貴信(さかぐち・たかのぶ1976-)は「観世流シテ方の若手ホープ」(p77)だそうです。
ないものねだり^^ですが、これでCDかDVDがついてたら(『高砂』『船弁慶』『井筒』などから収録)、最高でしょうね。
by tiaokumura | 2012-12-09 11:21 | 謡を習う | Comments(2)
Commented by アショーカ at 2012-12-10 22:21 x
コレ、わたしも買いました! 正しく初めて買った能関連の本です(笑) 仕事の都合もあり、遠隔地で観世流の門下に入りました。先生と同じですね~ヽ(^o^)丿 稽古事というのも浅からぬ縁があってのこと、とこの年齢になったればこそ感じ入ること多し!です。。。本日鶴亀終了しました~
Commented by tiaokumura at 2012-12-14 07:10
アショーカさま、お買いになりましたか。読み応え・見応えのある雑誌ですよね。
観世でしたか。お仲間ですね^^。でももう鶴亀終了ってすっごい。
謡本、新品で買ってると高くつくのでよくネットの古書店で購入してました。


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