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深町英夫編訳『孫文革命文集』(岩波文庫)

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深町英夫(ふかまち・ひでお1966-。中央大学経済学部教授)編訳
『孫文革命文集』
2011年9月16日第1刷
岩波書店(岩波文庫)
1140円+税

孫文(号は中山、逸仙。孫中山・孙中山・Sūn Zhōngshān、Sun Yat-sen1866-1925)についての僕の知識は中学歴史教科書程度でしょうね(恥)。民族・民権・民生の三民主義、1911年辛亥革命-この二つで高校受験は間に合うでしょうね(激爆)。孫文でもう一つ-僕は中国出張、これまで数回経験しているのですが、だいたいどこの都市にも中山広場があります。瀋陽では遼寧賓館(旧奉天大和ホテル)が中山広場に面していた。
そんな程度の僕だが昨年夏の神戸旅行で孫文記念館(移情閣)を訪れることができた。その時のブログ記事から一部補訂して以下に転載。オリジナル記事はこちら

8月21日、三ノ宮から舞子へ。舞子公園で舞子海上プロムナードに寄ったあと、孫文記念館(移情閣)に入る。孫文って、今現在も大陸本土・台湾の両方で尊敬されている偉人。20世紀を代表する人物の一人でしょうね。孫文の頃の日本人も偉かった。今朝(2010年8月25日)の朝日新聞に「孫文支えた日本人秘話」という見出しで、上海で開催中の「孫文と梅屋庄吉展」が紹介されてましたね。舞子の孫文記念館でももちろん梅屋庄吉(うめや・しょうきち1869-1934)が出ています。1920年代30年代、いつから日本は日本人は変節していったんでしょうね。軍部・財閥・右翼が天皇・政治家・知識人・文化人を誘導したってことになるのでしょうが、抵抗しきれなかった天皇・政治家・知識人・文化人の側の罪も重い。おそらく「支那」が蔑称となっていく過程と軌を一にするのでしょうね、「変節」は。移情閣は孫文支援者の神戸華僑・呉錦堂(1855-1926)の「松海別荘」が前身。

本書は1893年の「広州興中会宗旨」(韃虜を駆除し、華夏を回復する)から1925年3月11日の孫文永眠前日の談話「国民会議を実施して三民主義と五権憲法を実現せよ」まで、「孫文の主要著作や革命党の章程のような基本文献だけでなく、あまり通常の著作集には収められることのない、書簡・演説・談話・命令等」(深町英夫「解説」p457)を、「第一部 民族共和国への道程(1893-1912年)」「第二部 中央政権への挑戦(1913-1921年)」「第三部 革命運動の再構築(1923-1925年)」に分けて収める。他に文献目録・解説・索引。
1924年11月28日の兵庫県立神戸高等女学校での名演説が「大アジア主義-神戸高等女学校での演説」(pp428-447)。ここで孫文はヨーロッパの「武力で他者を圧迫する覇道の文化」に対峙する形でアジアの「仁義・道徳を用いる王道の文化」を唱える(p437)。
覇道の文化と王道の文化を比べれば、結局のところどちらが正義と人道に有益で、どちらが民族と国家に有利なのか、諸君は自ら証明することができます。(p438)
この後孫文は、僕は全く知らなかったのですが、当時のネパールと中国・イギリスの関係について触れています(pp440-441)。演説の最後に孫文は日本・日本人に訴える。
あなたがた日本民族は、欧米の覇道文化を取り入れた上に、アジアの王道文化の本質をも持っていますが、今後は世界文化の前途に対して、結局のところ西方覇道の手先となるのか、それとも東方王道の防壁となるのか、それはあなたがた日本国民の、詳細な検討と慎重な選択に懸かっているのです。(p446)
ただし、深町の注によると、この部分は「講演の際に語られたものではなく、神戸から天津へ向かう船が門司へ到着した頃に、船上で加筆された可能性が高い」(p447)とのことです。孫文の訴えも虚しく、「欧米の覇道文化を取り入れた上に、アジアの王道文化の本質をも持って」いる日本は「西方覇道の手先」になってしまった。

アップした写真で本書の下になっているのは朝日新聞2011年9月24日付「beランキング 会ってみたい『革命家』」。朝日新聞の会員サービス利用者が対象のアンケートで「20世紀に活躍した主な革命家約60人の中から回答者1人につき3人まで選んでもらった」そうです。トップ5は、順にガンジー・ゲバラ・孫文・マンデラ・毛沢東です。幸徳秋水(10位)・樺美智子(12位)・北一輝(14位)・大杉栄(15位)・トロツキー(17位)・ローザ・ルクセンブルク(18位)や、21位以下で重信房子・永田洋子・山本義隆といった名も。
by tiaokumura | 2011-09-25 12:24 | | Comments(0)


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