年間何百本と映画を見る人もいますが、僕の場合、最高は20代前半のときの
年間120本。ノートに見た日・タイトル・監督・主演・評価などを書いてた記憶がある。その頃はどこで見てたかと言うと、渋谷・新宿・池袋などのいわゆる「
名画座」。古い映画や初公開から2年くらい経った映画が、
2本立て(時には3本立て)で
低料金で見られた。今みたいなビデオ・DVDはもちろんまだなかった時代。でもそんなので見るよりやはり「映画館」で見た、ってのが良かったんだろうなぁ。日本映画の場合は、
オールナイトで「ヤクザ映画」「宮本武蔵」(内田吐夢)「人間の条件」などを。若かったんだろうなぁ、体力も時間もたっぷりあった^^。去年だったか東京でゴ
ダールの「
映画史」が上映されるってんで行こうかと思ったが、あまりにも長時間なのであきらめた。老化して頻尿傾向なんで(自爆)。京橋の
フィルムセンター(今も、たぶんある)もよく利用した。古いドイツ映画(「
カリガリ博士」など)・フランス映画(すごいラインナップだった)・
小津・
溝口なんかが、やはり低料金で堪能できた。
また前説が長くなった(爆)。昨日の続きを。
ミケランジェロ・アントニオーニ(1912~。イタリア)
ロッセリーニに師事、
カンヌ・ヴェネチア・ベルリン全てで「最高賞」受賞(三冠王^^)。
初めて見たのが何だったか忘れたが、60年代の5作(全部)と70年代の1作を見てる。製作順では「
情事」(60年)、「
夜」(61)、「
太陽はひとりぼっち」(62)、「
赤い砂漠」(64)、「
欲望」(66)、「
砂丘」(70)。「
赤い砂漠」が僕にとってのベストで、「
砂丘」で卒業^^したか。都会の上流社会のけだるさを描くのが上手な監督。
いい監督はだいたいいい俳優に恵まれるもので、アントニオーニの場合は
モニカ・ヴィッティ。映画表現の素材としての「
いい女」を発見・開拓するのが、欧米の監督はうまい。中には公私とも「いい女」にしちゃったりする(核爆)。思いつくままでも、
フェリーニと
ジュリエッタ・マシーナ、
ヴァディムとブ
リジット・バルドー、
ゴダールと
アンナ・カリーナ、
ベルイマンと
リヴ・ウルマン、
ルルーシュと
アヌーク・エーメなど。
モニカ・ヴィッティは、今風に言えばニコタママダムやシロガネーゼとでも言えばわかりやすいかも。やや口を開け気味のけだるい表情が印象深い。「赤い砂漠」では
リチャード・ハリス、「太陽はひとりぼっち」では
アラン・ドロンと共演。彼女は出てないのだが、「
欲望」には(最近知ったのだが)あの
ジェーン・バーキンが出てたのだ。バーキンは僕より2ヶ月若い。ってことはあの映画、御年20歳ころ。アントニオーニとは関係ないのだけれど、
ゲンズブールとのデュエット「
ジュテーム」は放送禁止にもなったすごい名曲で、今聞いてもゾクゾクッと来る(照)。
アントニオーニの映画は
音楽もいい。ずっと
エンニオ・モリコーネ(「
海の上のピアニスト」、彼です)だと思ってたが、これは勘違い。「情事」「赤い砂漠」「太陽はひとりぼっち」(アントニオーニ3部作と呼びたい)は
ジョヴァンニ・フスコ。ちなみに「欲望」は
ハービー・ハンコック。
日本も格差社会になりつつあるが、当時の(今も?)イタリアもフランスもイギリスもすごい
階級社会。キリスト教(あるいは西欧文明)あるいは資本主義の行き着いた先の、現代人のアンニュイ・孤独・疎外・絶望・愛の不毛・やりきれなさ・見出せない出口のようなものを、国籍や表現方法は異なっても、ベルイマンもゴダールもフェリーニ、アントニオーニも映像で具現化してたんだろう、きっと。
今あの当時のアントニオーニ作品見るとどうなんだろう。最新作の「
愛の神、エロス」(04)は見ていない。
アントニオーニだけで紙数が尽きてしまった(汗)。