人気ブログランキング | 話題のタグを見る

上村一夫、24回忌

上村一夫、24回忌_f0030155_18584146.jpg
今日1月11日上村一夫(かみむら・かずお1940-86)の祥月命日。彼は享年45歳ですから実に早い人生の終焉でした。上村一夫の公式サイトには彼が漫画(作品名不明)を描いている写真が載っているのですが、まだ40代の時の彼の若い(と言っても彼にとっては「晩年」)顔、棟方志功(むなかた・しこう1903-75)の板画の姿勢のようにペンでコマの人物に太い線を入れている姿―痛ましくさえ感じられる。同サイトの「プロフィール」に、
・・・特に「同棲時代」は”劇画史に一時代を画した”と称されるヒット作品となった。/また、その流麗なる筆画から”昭和の絵師”と称され、月産400枚の原稿を手掛ける多忙さを極めた。
とあるように、人気作家ゆえの多忙さが彼の命を縮めた、命を削って数々の作品を生み出したんでしょうね。

漫画」の歴史は『鳥獣人物戯画』(12世紀)あたりに始まるのでしょうが、漫画とともに成長していったのは僕らの世代が嚆矢でしょうね。子どもの頃の紙芝居(『黄金バット』など)・手塚治虫・『赤胴鈴之助』(福井英一→武内つなよし)・貸本漫画(劇画)・月刊誌「少年」や「冒険王」、中学時代に創刊された週刊誌「少年マガジン」・「少年サンデー」、大学生になってからは週刊「漫画アクション」も創刊された。数々の夢中になった作品群。同世代が漫画の話をしだしたら、止まらないでしょうね。僕のほぼ同じ世代に、黒鉄ヒロシ・林静一・永井豪・池田理代子・谷口ジロー・弘兼憲史・本宮ひろ志・山上たつひこ・山岸涼子・里中満智子といった多数の漫画家が輩出しているのも、僕たちと漫画の関係を強く物語っている。

アップした写真は、上村一夫『同棲時代』(漫画アクションコミックス)第1集(1972年11月20日発行。定価250円)~第6集(1973年12月1日発行。定価280円)。6冊とも全て初版ですから、連載(週刊「漫画アクション」1972年3月2日号~73年11月8日号)から単行本になってすぐに買ってたんでしょうね、僕。こうして並べてみると、自分はずいぶん遠くまで来たんだなぁという想いと、いや、この頃と今と自分はあまり価値観は変わってないんじゃないだろうかという想いが交錯する。実際のところ、どうなんでしょうね。また読み返す勇気はなく、そうかと言って捨ててしまおうとも思わない-そんな「思い出の本たち」です。

第6集 VOL.71 最終章」は次郎今日子の再会。そして、
愛はいつも/いくつかの過ちに 満たされている/もしも愛が 美しいものなら/それは男と女が犯す この過ちの美しさに 他ならぬであろう//そして愛が いつも涙で終るものなら/それは愛がもともと 涙の棲家だからだ-
の詞。そして更に、最後のページの1つ手前の見開き2ページの大きなサイズのコマには、年老いた今日子と次郎が夕陽を背景に海原のような中で距離をおいて見つめあっている。上村一夫はこのシーンで何を言いたかったのだろう。僕には「永遠の謎」である。

(参考)
上村一夫公式サイト
清水勲『年表 日本漫画史』(2007年6月1日初版。臨川書店)
by tiaokumura | 2010-01-11 18:58 | 思い出の本たち | Comments(2)
Commented by kaguragawa at 2010-01-12 00:56
 “「同棲時代」の劇画家・上村一夫は酔うときまって「港が見える丘」を唄った。もちろん破調、乱調の「港が見える丘」である。”と久世さんの『昭和幻燈館』にあります。この本には久世の上村追悼文「朧絵師の死」もあって、“<劇画家>と言うと、彼は必ず<漫画家>と訂正した。<画家>と言われると<絵師>だと言った。上村一夫は、昭和最後の絵師であった。”とあります。
 奥村さんの記事を読んで、久世と上村の共作「螢子」を注文しました。
Commented by tiaokumura at 2010-01-14 22:00
kaguragawaさま、上村と久世も交流があったんですね。あのあたりの世代はまた独特の生き方をしている人が多そうです。久世の本ってほとんど読んでいない(食わず嫌い?)のですが、何冊か読んでみたいです。
今冬は雪が多いです。通勤などお気をつけて。もし呑兵衛だったら、特に雪道はお気をつけください。(小生は経験者なり^^)


<< 粕谷さん、修士論文提出祝賀飲み会 打ち上げ@ステーキ宮 >>